初めての彼女ができた。
こいつがまた極度の照れ屋で、俺が告白したら突然泣き出したのも記憶に新しい。彼女曰く、嬉しすぎて、だそうだ。
まあ俺としても好都合だったりする。人前でいちゃいちゃしたくねえし、そういう輩を見てるとイライラする。だからそういうことを強要しないこいつとは、一緒に居て気持ちが落ち着く。
だが、今朝から何処となくこいつの様子がおかしい。何かそわそわしてるっていうか。質問しても曖昧な返事しか返さない。
「どうしたんだよ、何か今日変だぜ」
「な、何でもないよ!」
この通りだ。埒が明かないから、少し強行突破することにした。その細い手首を掴んでみると、予想以上に驚いていた。
「あ、悪い…痛かったか?」
「ち、違うの…!」
「…なあ、本当に何でもないのか?」
少し屈んで目線を合わせる。下を向いてた彼女は、観念したように俺の目を見つめた。
「もう、宍戸くんには敵わないなぁ…。怒らないで聞いてね?」
「おう」
消え入りそうな小さな声で言う。他の奴だったらきっとイライラしてるけど、こいつには苛立たない。
「その…手繋いじゃだめ、かな」
消極的な彼女のものとは思えない発言に驚きこそしたものの、悪い気はしなかった。
左手首を掴んでいた俺の右手を開いて、そのままがら空きだった彼女の左掌を握りしめた。恋人繋ぎなんて甘ったるいことはまだいいだろ?
とあるリア充の移動教室
2011.夏季拍手