ガンマ2号なりのアプローチだった話


 僕がどんな人造人間なのか? ふっ。
 どうして笑っているの、か。僕のこと、気にかけてくれるんだなーって思ったらうれしくてついこぼれちゃったんだ。ふざけてないさ、ごめんごめん。どんなって訊かれてもなあ。僕は――僕たち機械由来の人造人間は君たち人間と比べたらずっと単純だよ。
 たとえば君がだれかに心を踏みにじられて、涙を流すとする。
 さめざめと瞼を赤く腫らした君を僕はきっと見ていられない。あの手この手を使って励ますだろう。一刻でも早く、君を嫌な気持ちにさせたやつのことなんか忘れさせて、一秒でも早く、君を笑顔にしてみせるよ。そのさまがどんなに恰好わるい道化っぷりだったってかまうもんか。どんな君だって素敵だけど、やっぱり笑った顔がとびきり好きだから。全力を尽くして君の元気を取り戻す。これがガンマ2号だ。
 でもね、一方でこうも思うだろう。君が悲しんだとしても、仕返ししてやろうなんて考えない。これが1号だったらね、もう、絶対、怒髪天を衝く勢いで怒るよ。そいつのこと殴りにゆくかも。でも僕は違う。恨みも憎みもしない。一歩引いて、どこか冷静に、泣いている君を、カワイソウ、って思うだけ。カワイソウだから慰めるし寄り添う。これもガンマ2号だ。
 ねえ、僕って優しい? それとも冷たい? これって矛盾しているのかな。でも、どちらも僕だってことに変わりはないんだよ。人間はより複雑怪奇な多面性を抱えた生きものだろう? 生まれてきたばかりの僕には、現状、この二面しかない。人造人間・ガンマ2号のすべてだ。
 君にはそのすべてをあげる。
 幸い僕には一部の人間みたいな厚ーい面の皮なんてないからさ。まあ、代わりにあるのは、生憎それよりずっと硬い金属性のフェイスパーツなんだけど。でも君が相手なら剥がす。下になにが隠されているのか覗いてごらん。そして判断してくれ。僕がどんな人造人間なのか。すぐじゃなくていい。あせらず、ゆっくり、欲を言えば僕のすぐそばで見ていてくれるとうれしいな。僕も君がどんな人間なのか、改めてじっくり見つめたいし……うん! 我ながらよいアイディアだ!
 ああ、そうだ。後学のためにさ、どんなことで君は傷ついてしまうのか教えてほしいんだけど。え? なんでってそりゃあ……君がだれかに傷つけられるのが嫌だからだよ。怒りはしないけど、だからといってよい気分になるものでもないだろ。未然に防げるものなら防ぐに越したことはないし、そもそも……仮説として立てたはよいけど、大切な人たちを守るためにヒーローはいるんだ。起こさせないよ、絶対に。僕、君のこと、大切に思っているから。
 ……、……やっぱりうまく伝わってなかったみたいだな。あーあ。難しいなあ、人間相手は!


〈了〉



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