第一節
 
強大な妖気をたどって幾つか角を曲がった時、

「ッ!!」
「雅?どうした」
「・・・消えた」

今まで痛いほど感じていた妖気が、跡形も無く途絶えてしまった。
・・・誰かが討伐した?
だが神気を持たない人間からの物理攻撃なんて、あいつ等からすれば蚊に刺された程度のダメージにしかならないし、与える事も出来ない。
同業者?
けどこんのすけからは何も聞いていないし、帝も何も言っていない。

「・・・行ってみる?」
「待って」

人の気配がする。




「はぁ・・・やっぱり効率悪いですよ、土方さん」
 
そこにいたのは浅葱の羽織を羽織った3人の男達。
黒髪を高く結い上げ、眉間にシワを深く刻んだた男に、今にも鼻歌を歌い出しそうな雰囲気の、どこか楽しんでいる様子の茶髪の男。
もう一人は群青っぽい色の髪をサイドテールにした、襟巻を巻いた無表情の男。
そのうちの一人、茶髪の男が伸びをしながら心底面倒くさそうに呟き、土方と呼ばれた黒髪の男に睨み返されている。

「しょうがねぇだろ、上からの命令なんだ。お前は黙って始末してればいいんだよ。総司」
「はいはい、土方さん本当人使い荒いよねー、一くん」
「あんたはもう少し態度を見直したほうがいい」
「一くんって何気なくひどいよね?」

全員が、たった今人を斬ったと言いたげな血の付いた刀を片手に、その足元には彼ら同様浅葱色の羽織りを羽織った白髪の死体が転がっていた。




(妖気の発生源はあの死体。遡行軍じゃないね)

印を解いて透視の術を解除し、額に滲んだ汗をぬぐう。
透視の術って短時間なら問題ないけど長時間は結構疲れるんですよねぇ〜

(死体が新選組の羽織を着てるところを見ると、裏切り者の粛清)
(・・・と言いたいところだけど、あの口ぶり的にちょっと違うね)
(・・・・・・そう言えばよ、俺、珠洲が(戻って)うおっ!)

加州(あだ名は珠洲)から何か聞いていたらしい鶴丸が何か言おうとしていたのを慌てて遮り、彼らを本体の中に隠す(審神者権限の能力です)。



「―――ねえ、誰か・・・そこにいるよね?」



(・・・気付かれた)

隠形の印を結び、考えるよりも先に身を翻した――。
 
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