第一節
審神者になる前はフツーに学校行ってバイトして、ネットしたり買い物したり・・・極々一般的な一般人の生活をしていた。
戦争どころか喧嘩すら滅多に遭遇しないような生活で、流血刀傷沙汰なんて、映画や小説のフィクションの中、もしくは遠い過去の話。
審神者になって、それらがグッと近づいた。
でも僕自身が戦場に行くわけではなくて、皆を戦場(怖い所)に送り出して、帰ってきたら手当をして・・・
全ては壁一枚挟んだ向こう側の世界の光景でしかなくて。
その、戦場に、今、僕はいる。
嗚呼、僕は、何て弱い。
優しく抱きしめてくれる三日月の着物を弱弱しく握る手が、震えている。
まだ戦闘が始まるどころか“奴等”の気配すら感じ取っていないのに。
「ごめんね。今まで散々皆の事こんな怖い所に送り出してたのに・・・」
「よいよい・・・“心”を持つ者ならば、戦を恐れるのはごく自然な事だ」
それにな?主よ。
「あんたは俺達が守る」
「そ。怖い思いは沢山させちゃうけど、絶対守るから」
「あんたは俺達の総大将として、後ろでドンと構えとけばいいのさ」
桜生、燭、月鳥・・・
《主》《大将》《あるじさま!》
《あんたを守ると誓ったのはそいつらだけじゃないぜ?》
《俺達もいる・・・》
懐の札を通して、本丸で待機している皆の声が頭の中に響く。
ほら、皆がいるから、もう怖くないでしょ?
「・・・うん、ありがと」
ざわっ・・・
「妖気っ!」
「来たか・・・ッ」
「雅ちゃん、どっち!?」
「あっち!」
妖気の大きさからして短刀脇差レベルではない、おそらく大太刀・・・しかも刀剣達の手当の際に嗅ぎなれた鉄臭さも強い。
こんのすけに聞いていた通り、本当に一般人を襲っているのか・・・
5人は走り出した。