ハッと、弾かれたようにレスティを見つめ、同時に一斉に頷く104期生達。
「
そうだな・・・ッそうだな!悪い、忘れてた・・・」
「早くしないと、怪我をした人が死んじゃうかもしれませんもんね」
「サラッと演技でもないこと言うな!!」
この状況だと、正直、冗談とも言い切れないサシャの発言に、盛大に突っ込むコニー。
だが、冗談で済ませる為に、見ず知らずの兵士達が、真っ先に動いてくれている・・・
本当なら、自分たちが真っ先にやらなければならないのだ。
『必要な道具は、皆さんが準備しているはずです』
「分かった、行ってくる!」
「ミカサ!アルミン!!レスティ!!エレンのこと頼むぜ!」
「・・・言われるまでもない」
「うん、大丈夫!」
グレンの部下たちが飛んでいった方角へ向けて、アルミンとミカサを除く104期生全員が一斉に立体起動を繰り出した。
「ほら、訓練兵は分かってるじゃねえか」
「しかし!!救助をしている間に、そこの“巨人”が暴れだしたら・・・ッ!」
ゾクッ背筋を走る悪寒。
嫌な汗が頬を伝い、膝がガタガタと震えだす。
ダークブラウンの髪の隙間から覗くのは、静かながらも純粋混じり気の無い“怒り”。
「テメェの仲間が、大切な人が、こうしている間に死んでいくんだぞ?
すぐに手当すれば助かった筈なのに・・・今!こうして!!テメェ等がのんびりしてるせいで・・・」
これまで共に高め合い、夢を語り、励まし合って苦楽を共にした仲間が、
ホンの数時間前まで一緒に飲んだり食ったり、笑いあった仲間が、
今、この街のどこかで、瓦礫に挟まれて動けなくなっているかもしれない。
怪我をして、沢山血を流して、倒れているのかもしれない。
今すぐ助ければもしかしたら、明日も明後日も、
一緒に語り合うことが出来るかもしれない、更に高め合うことができるかもしれない。
励まし合うことができるかもしれない・・・笑い合うことが、できるかもれない。
仲間を、大切な人を失う痛みを、
気が狂いそうな苦しみを、味わう必要がないかもしれない。なのに
「そのチャンスを・・・わざわざ捨てるか?」
脳裏に蘇るのは黒ずんだ赤色に染まった手を握る“彼女”の後ろ姿。
ホンの数分前まで一緒に笑いあっていた面影すら欠片ほども感じられない“それ”を前にしても、“彼女”は俺たちの上に立つ者としての振る舞い以外を赦されない。
なんて気丈で気高く美しい、そしてか弱い背中だろうか。
護ろう。
その華奢な背中を、押しつぶさんとするこの世の全てから。
強くなろう。
誰よりも、何よりも、誰一人死なせてしまう事の無いように。
気が狂いそうなこの絶望の中に、“彼女”を突き落してしまわないように。
「本当に護るべきモノが何なのかを見失うな!!
仲間を見殺しにする事と一人でも多く助ける事・・・今一番優先するべきなのはどっちだ!!!」
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