BetweEn NighT
 
「訓練兵、その“巨人”を渡せ」

髭面で大柄な駐屯兵の言葉に、ミカサの纏う空気が鋭さを増す。
ジャンも、ミカサ程ではないが、僅かに目を細めた。

ピリピリと張り詰めた空気の中、怯えを押し殺し、アルミンは髭面の男に声をかけた。

「現在、壁外調査より急遽帰還されたリヴァイ兵士長が残党の討伐に当たっとおられます」
「そうか、リヴァイ兵士長が・・・ならば一掃されるのは時間の問題だな」

だが、“そこ”に一体残っているではないか。

「よくやったな、訓練兵。さあ、後は我々に任せてその“巨人”を渡せ」
「・・・お言葉ですが、“どこ”に“巨人”がいるのです?」
「え、あ、っちょ・・・ミカサ!」

とうとう耐え切れなくなったのか、エレンをアルミンに託して半刃刀身を抜き、ゆらりと立ち上がる。

「決まっている。お前の後ろにいる金髪の訓練兵が抱える“それ”だ」
「・・・彼は“巨人”ではありません・・・第104期訓練兵3位卒業者、エレン・イェーガーです」
「何を言っている?お前も見ただろう、ソイツが巨人の項から出てきたのを」

人に化けて紛れ込むとは・・・忌々しい巨人め。

「さあその巨人を渡せ、さもなくば貴様らを巨人に味方する人類の敵と定め、今ここで皆殺しにせねばならなくなるぞ?」

この中のリーダーらしき男が片手を上げて合図すると、駐屯兵達が幾つもの大砲の標準を一斉に104期生に定めた。
同時に、その場の空気が一気に鋭さを増し、ミカサが今にも駐屯兵に斬りかかろうと姿勢を低く構える。

その時

グイっとジャンを押しのけた小柄な人影が、更にミカサの一歩前に出て鞘から抜いた双剣を構えた。
欠片程の隙も見せないその姿に、アルミンが「レスティ?」と呟くが聞こえている様子は見られない。


その黄金の双眸に宿るのは、狂気とも言うべき苛烈な輝きを放つ、“憤怒”。


『・・・お取り込み中、横から失礼します』
「誰だ貴様は。見たことのないジャケットだな」
『北方面駐屯隊第38期第四部隊所属・・・レスティ・イリアーデル』

北流らしき敬礼の姿勢を取る。



ザワッ

“北方面駐屯隊”という単語に、駐屯兵の間でざわめきが広がる。
これが、今まで傍観を貫いてきた“北”が初めて“南”の前に姿を現した瞬間だった。
 
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