1 NighT
 
―お前がそれ望むなら、俺が力を貸してやろう―




「・・・え?」

脳内に響いたどことなく聞き覚えのある気がする声に、エレンは目を見開いて周囲を見渡した。
しかし視界に映るのは、上官からの支持を仰ぐ同期達の姿ばかりで、今の声の主と思われる人間の姿は無い。
気のせいかと気持ちを切り替え、ガチガチとガスボンベを鳴らしている幼馴染に歩み寄った。


超大型巨人が扉を破壊し、蒸気と共に姿を消したのが数分前。
今すぐ穴を塞ぐ術が存在しない以上、5年前同様巨人を壁内に招き入れてしまうのは目に見えている。

怯える訓練兵の手前、表面上は上官らしく振舞い指示を出す駐屯兵達だが、その瞳の奥には「今すぐ逃げたい」という本音がわかりやすく見え隠れしていた。


「・・・アルミン、大丈夫か?」
「だっ大丈夫だ、こんなのすぐ治まる!しかし不味いぞ・・・今の技術では壁に空いた穴を塞ぐ術はない。このままじゃ・・・」


―五年前みたいな散々な結果になる事はまず無いだろう。何故なら、―


「アルミン、大丈夫だ。少なくとも五年前みたいな有り様にはならない・・・こういう事態を想定して、前に散々話し合っただろ?」
「・・・・・・」

2人がまだ訓練兵だった頃、食事の時間や就寝時間など空いのた時間を使って紙とペンを片手に何度もシュミレーションをした。
何時またあの超大型巨人が攻めてくるかも分からない状況である以上、生き残る為の策は多いに越したことはない。
最初は訝しんでいた同期生達も、やがてシュミレーションに加わって案を出しあうようになっていた。

「起こってしまった事は仕方がない、ここから如何にして生き残るかを考えよう」
「・・・・・・・・・そうだったね・・・うん、そうだよね。ならパターンAとCが使えるかもしれない」

いつの間にか、手の震えは止まっていた。



―色々と聞きたいだろうが、今は従え。そうすれば、俺がお前達を守ってやる―
 
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