6 NighT
 
エレンの前をリヴァイが、その後ろをリヴァイが選出した精鋭達が馬を走らせる。

巨人化の力は未知数であり、住人と壁に万が一の事が起こらないとも限らない、という事でエレン達は現在、市街と壁から離れた場所にある旧調査兵団本部に向かっている。
ちなみにこの理由は表向きなモノであって、実際は巨人以上に醜悪な存在“人間”から、エレンを守るためなのだが、知らぬのは本人のみ。



「兵長、上の階の清掃、完了しました」

蝶番の外れ掛かった木窓を、強引に押し開けるリヴァイに声をかける。
グレン曰くリヴァイは“ドン引きするくらい潔癖症”との事だ。

「ちっ、ここも油差しとかねえと駄目か」

舌打ちを零しながら(手袋してるのに)手を払う。
“ドン引き”はしないが“ビックリ”するレベルの潔癖症だ。
視界の端に映る蜘蛛の巣・・・・彼からすれば、この空間は耐えられる物ではないらしい。

「お前は地下室を掃除してこい」
「終わりました。オレの荷物も運んであります」
「・・・ほう。俺はお前が掃除した部屋を見てくる。ここをやれ」

そう言って部屋を出ていくリヴァイの背を見送りながら、エレンは箒を手にとった。

「失望した?」
「え?」
「世間の言うような、完全無欠の英雄には見えないでしょ?
 現物のリヴァイ兵長は・・・思いの外小柄だし、神経質で粗暴で近寄りがたい」

確かに躾には痛みだとか言うような人だし口も悪い、顔は整っているとは思うが、一見すると凶悪とも言える人相だ。


けれど・・・優しい人だ。

―-アイツは、ほっとけば蒸発する巨人の返り血すらハンカチで拭くくせに、看取った部下の血は絶対に拭かない。
 “人類最強”なんて肩書は、たかが30年しか生きてないようなガキには重すぎる-―


そう教えてくれたグレンさんは、“北の人類最強”と呼ばれているのだと聞いた。
“人類の希望”と呼ばれてもその実感が持てないエレンでは、あまりにも理解し難い重圧。


それでもとても“孤独”だという事だけは、分かる。
 
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