ズドオォォォォン・・・トロスト区に響き渡る、重々しい音と地響き。
その正体に気付いた者達が歓喜の声を上げる中、音の発生源に向かう二体の巨人に気づいた。
『エレン先輩!!!』
他の人はガス欠で動けない。
レスティは立体起動を駆使して二体の後を追った。
穴を塞いだ大岩に背中を預けて、エレンの巨人体がグッタリと、力無く座り込んでいる。
“仲間を守る”事と“巨人を殺す”事、そして“穴を塞ぐ”・・・
3つの目的を十分に達成させた上に、今回は初めての巨人体精製・・・もう限界だ。
早く項から引きずり出さないと・・・
いくらあの人が抑えてると言っても、これ以上は暴走しかねない。
おまけに巨人体の肩で何か叫んでいるミカサとアルミンは、エレンの“戻し方”を知らない。
三人に迫る二体の巨人の足を、少しでも完全再生に時間がかかるよう膝から切り落とし、
さらに這って移動できないよう腕も切り落とし、
レスティは混乱する二人の許へ飛んだ。
『ミカサ先輩、アルミン先輩、落ち着いてください』
「レスティ!!どうしよう・・・エレンが元の姿に戻らないんだ!」
『項です、先輩本人は項にいます。項の肉ごと巨人の体から引き剥がしてください』
「や、やってみてる!」
レスティの言葉にようやく落ち着きを取り戻したらしい二人。
エレン本人の身体を傷つけないように慎重に、項の肉を剥いでいく・・・
「いた!ホントだレスティ、エレンだ!エレンがいた!!」
足を再生させて蹲る巨人二体に体を向けて構えると、
背後から、ブチブチと肉を引き千切る生々しい音が聞こえた。
聞くだけで痛そうな音だ。
アルミンは「痛いよね、ごめんね」と連呼しているが、
巨人体が完全に機能を停止しているのでエレン自身は痛みを感じてはいない筈だ。
接続部分を全て千切り、落下したエレンの体をミカサとアルミンが受け止める。
「エレン!!」
「エレン・・・よかった、エレンッ!」
指一本動かすことすらキツイだろうに・・・薄らと微笑むエレンに二人は勢いよく抱きつく。
これでエレン先輩は大丈夫、あの人にはだいぶ無理をさせてしまったけど。
残る問題は・・・
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