5 NighT
 
ピイィィィィ・・・


どこからか響く甲高いそれは指笛の音だった。
音の発生源に思い当たるフシがあるらしく、面倒くさげに表情を歪め溜め息を吐く。
それを見て口元を引き攣らせて乾いた笑みを浮かべるウィル。

「グレンさん?今の音って・・・」
「レスティが呼んでるんだ・・・面倒くせぇ」
「この方法で呼び出されるときはいつもロクな理由じゃないですから」

「今回は何だと思う?」
「“お腹すいた〜”に金貨3枚」
「豚のしつこさに耐え兼ねてのSOSに5枚」
「会議中に隊長が“殺気”使ったから・・・その説教に10枚」
「「「それだ!!」」」


好き勝手想像する部下たちを思いっきり睨みつけ、盛大な舌打ちと共に控え室を後にする。
話の流れからして十中八九、レスティのいると言う医務室に向かったのだろう。

「パシリか説教だった場合、俺に八つ当たりしないでくださいね」

ボソッと呟いてグレンの後を追うウィル。


「あ、あの・・・」
「何だい?」
「オレも、レスティの所、行きたいんですけど・・・」

トロスト区では散々助けてもらったというのに、幽閉されていたせいで礼を言えてないのだ。
おまけに、巨人に群がられたエレンを助けたかわりに大怪我を負わせてしまった。

こんな化物である自分に、礼なんて言われたくないだろうがせめて、一言だけでも伝えておきたい。


「成る程・・・なら、私達も一緒に行こう。それなら誰も文句は言えまい」

噂の実力者に、少し興味もあるしね。
最後にそう付け加えたエルヴィンは、確かに“調査兵団団長”の顔をしていた。


まったく実態の掴めない“北”で、一番最初に“南”の前に姿を現した人物。
トロスト区で一瞬だけ姿を目撃したリヴァイに曰く、エレンと大して変わらない子供だったそうだ。

しかし、その身の内に秘めたる刃はおそらく南が誇る人類最強にも届く。
十分興味をそそられた。
 
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