・・・確かにエレン自身、この力を正確にコントロールできる自信は、正直無い。
もし、アイツの協力がなかったら・・・
正気を失い、暴走して仲間を手にかけることになったら・・・
「だけど、オレには力があるから・・・オレがやらなくちゃいけない。
あなた方も、力があっても戦うのが怖いというのなら・・・協力するだけでいい」
視界の端で、グレンが僅かに口角を上げたのが見える。
目を細めたリヴァイに、エルヴィンが何かを耳打ちしたのが見える。
―-腹に力込めて衝撃に備えろ。動くのはリヴァイだ-―「(分かってるよ)」
言葉の意味を察し、言われた通り腹に力を込めて、少しだけ身体の位置をズラす。
今の場所だと蹴られたりした時に間違いなく角に頭をぶつける。
そして、思いっきり息を吸い込んだ・・・
『いいから黙って全部俺に投資しろ!!!』横っ面に靴先が叩き込まれる。
衝撃で勢いよく脳が揺れ、軽い脳震盪が起こった。
ブーツの踵が下顎に直撃し、ゴリッと嫌な音と共に視線の端に白い小さな物体が映る。
歯が折れたようだ、がアイツ曰く、すぐに生えるらしい。
髪を掴まれ、今度は鳩尾に膝が叩き込まれて一瞬息が詰まり、エレンは呻いた
分かってはいたし、衝撃にも備えていたけど・・・滅茶苦茶痛い。
けど、歯は折れたけど骨折とかはしていないみたいだし、多少は手加減されているらしい。
足で頭踏まれたりしてるけど。
「これは持論だが、躾に一番効くのは痛みだと思う・・・お前に一番必要なのは、言葉による“教育”ではなく“教訓”だ。
まあ、コイツが巨人になろうが、俺の敵ではないが」
最後にボソッと呟いた、[しゃがんでるから蹴りやすいしな・・・]は、間違いなく彼の本音だ。
「総統、ご提案があります」
エレンの“巨人の力”は、不確定要素を多分に含んでおり、常に危険性が潜んでいる。
そこでエレンが調査兵団の管理下に置かれた暁には、対策として、リヴァイ兵士長が行動を共にする。
彼ほど腕が立つものなら、いざという時にも対応出来る・・・との事だ。
「ほう・・・できるのか、リヴァイ?」
「殺すことに関してなら、間違いなく」
「ならば次の壁外調査でエレンが人類にとって有意義であることを証明してみせよ。
その結果で今後を判断しよう。エレン・イェーガーは調査兵団に託す・・・
結果次第では、再びここに戻る事になる」
こうして、兵法会議は閉廷となった。
一部、不満気な豚がいたが、グレンが何かの書かれた紙を見せると青褪めながら納得した。
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