4 NighT
 
「いい加減にしてください!」


ここで、いい加減堪忍袋の緒が切れたらしいエレンが叫んだ。
フッと笑みを零したグレンは、抜刀しかけていた刀の柄から手を離し、席へ戻る。
  
騒がしかった会場がシンッと静まり、神父(ニック司祭と言うらしい)に視線を向ける。
その目に宿るのは、苛立ちと、軽蔑と、確かな怒りだった。

「いつもいつも、そうやって己の保身ばかり・・・」


ウォール・マリア襲撃後も、結果として多くの避難民を殺したのは巨人ではなく彼らだ。
もちろん、エレンを解剖することで、巨人に対する手がかりが掴めるのであれば、協力を惜しむつもりはない。

巨人を恨み、その正体を暴き、一匹残らず駆逐したいと望むのは、誰よりもエレン自身なのだから。

だが、もし何も分からなければどうなる?
“声”のサポートがなければ、巨人化を完全に制御できるとは限らないし、その方法も知らないけれど、
エレンを失えば、人類はウォール・マリアに開いた穴を塞ぐ術を、永遠に失う事だけは分かる。


「ほう・・・エレン、君は調査兵団への入団を希望しているが、
 これまで通り兵士として人類に貢献し巨人の力を行使出来るのか?」
「出来ます」
「ふむ、確かに君の今回の功績は無視出来るものではない」

どうやら、他のボンクラ(貴族とか憲兵とか貴族とか貴族とか・・・)と違い、総統は冷静に物事を判別できる人のようだ。


「総統、しかしエレン、及びミカサ・アッカーマン両名は当時9歳にして強盗である3人の大人を刺殺しております。
 正当防衛として理解できますが、根本的な人間性に疑問を感じます」

なんて報告する憲兵に、すっごくイラっとした。
という事は、このオッサン、子供は大人しく売り飛ばされていれば良かったのだと言いたいのか?

「そんなことは言っていない。だが、事はそんなに単純ではないんだ。
 キミに人類の命運、人材、資金を託すに値するかどうか、それを見極めなければならない。
 資源は無尽蔵にあるわけではないのだからな」

後半部分のみ、珍しくマトモで。
そう思うのなら、真面目に仕事しろや憲兵団。

「なあ、悠長に議論してる場合なのか?コイツは、いつ爆発するか分からない火薬庫のようなものだぞ」

そして豚は黙ろうか。
 
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