4 NighT
 
「(・・・今の声・・・)」

その一部始終を観察していたエレンは、思わず瞠目する。
大佐と呼ばれた男の声は、何度もエレンや仲間を救ってくれたあの“声”と酷似していた・・・
 
  
「では、北方面駐屯隊第一部隊、グレン・イェーガー隊長の意見を聞こう」
「「「!!!??」」」
「(グレンって・・・えぇ!?)」
 ザワッ


総統が口にしたその名前に、再び会場内がざわめきで満たされ、
“グレン大佐”と呼ばれた男に視線が集まる。
そしてエレンは、思考回路がショート寸前である。

グレン本人は、至極面倒くさそうに、盛大な舌打ちを響かせていたが。


ちなみに、ざわめき&注目の理由は二つ。
一つ目は、これまでどんな大きな問題が生じようと一切の動きを見せず、
干渉もしてこなかった“北”が動いている事。
しかも“隊長”という役職を担う、大物中の大物が初めて“南”の前に姿を現したこと。
さすがに総統は顔見知りだったようだが。

二つ目は、その大物のファミリーネームが、現在進行形で目の前で拘束されている少年と同じだった事。

噂によれば“北”の連中は、身内と同士には寛大で、
それが犯罪者だろうが死刑囚だろうが構わず“保護”対象とするのだという。

しかも“北のやる事に一切の口出しをするな”という王命も下っている。

もし、この“北”の大物がエレンの身内ならば“保護”の対象とされる可能性が高い。
エレンを処刑したい貴族や、解剖を望む憲兵団からすれば、最悪な展開。


「・・・総統、アンタわざとか?」
「何のことかな?」
「ムカツク」

総統相手に、苛立ちを隠そうともしない。

凶悪という言葉を、そのまま表現したかのような表情だ。
その場の空気がバッキーンと音を立てて凍りついたのは、言うまでもない。

涼しい顔をしているのは総統と、エルヴィンと、リヴァイと、あとは北の人間だけ。
無表情でお馴染み、ミカサですら(分かりにくい)怯えの表情を見せている。

すっかり怯んで動けない貴族を一瞥し、今度はハッキリと、エレンを見た。


狂気にも似た、苛烈な光を宿す黄金の瞳が、一瞬優しげに細められる。


「・・・エレンを殺す、か・・・」
 
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