この駐屯兵はエレンを失うことを、人類の損失になるのではないかと考えているらしい。
駐屯兵団による報告に、会場はざわめき始めた。
所々で化け物だの人類の希望だの、勝手な事ばかり聞こえてくる。
が、エレンはそんな事どうでも良いと言いたげに、自身に視線を向ける“北”の男を凝視していた。
エレンと同じダークブラウンの髪は、エレンより少し長め。
ギリギリ肩に付く長さで、前髪の隙間から除く瞳は黄金。
世の中同じ顔の人間が三人はいるのだと、幼い頃アルミンに聞いた事があった。
だから、髪や瞳の色が同じである事に対しては、別に不思議に思わない。
「静粛に。次は調査兵団の案を伺おう」
「はい。調査兵団13代目団長エルヴィン・スミスより提案させて頂きます」
調査兵団の提案の内容は、地下室で聞いた通りエレンを正式な団員として迎え入れ、
巨人の力を利用し、ウォール・マリアを奪還する事だ。
しかし、その提案に対して、派手な服装の貴族と思われる男が反論する。
男は、今度こそ扉を完全に封鎖すべきだと考えたらしい。
だが、こんどは神父服を纏った男が貴族の男の意見に反対した。
そして壁を欺き侵入したエレンを、今すぐ殺すべきだと主張する。
―-エレン、お前も言う内容考えとけよ-―「(は?)」
一週間ぶりに、頭の中に“声”が響く。
ダァンッッ!!!!会場内を揺るがす、大きな音がその場にいる全員の鼓膜に衝撃をもたらし、
何人か(主に貴族)が耳を抑えた。
騒音に慣れてる調査兵なら、ギリギリ耐えれるレベルだが、リヴァイの眉間のシワは3割増。
エルヴィンも眉を寄せているが・・・至近距離で聞いたはずの黒服は、ケロリとしている。
ちなみに音の発生源は、一番偉い(と思われる)ダークブラウンの髪の黒服が踏み抜いた机。
それまで空気と化していた黒服の、まさかの暴挙に約数名(黒服と総統)を除いて唖然となる一同。
この展開を予想していたのか、他の黒服(主に金髪)は必死で笑いを堪えている。
机を踏み抜いたままの足を下ろし、顔色一つ変えない総統に向き直る。
「お取り込み中失礼、総統・・・“北(俺等)”からも意見言わせてもらって良いか?」
「ああ、構わぬよ」
「どうも・・・で、お前は何時まで笑ってんだ」ドゴォ!
「隊長!何で蹴る強さが机より俺の頭の方が強いんですか!!?」
哀れ金髪。
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