「さて、エレン・イェーガー君だね・・・君は公に命を捧げると誓った兵士である。違わないかい?」
「はい」
ダリス・ザックレー総統が席につき、兵法会議が執り行われた。
まあ、会議の内容は下らないとしか言い様がないので、軽く聞き流すとしよう。
「(・・・あれ?)」
この場に不相応な種類の視線を感じ、気づかれないように視線を巡らせると総統に最も近い席に見慣れない集団見つけた。
一番前に座っているのは、漆黒の軍帽を目深に被った、エレンと同じダークブラウンの髪の少年。
その少し後ろに、同じく軍帽を目深に被った少々小柄で細身の金髪の青年と、オレンジ系の茶髪を二つに分けて結った女性。
エレンに視線を向けているのは、先頭に座っているあの中で一番偉いであろう少年だ。
帽子で表情が見えない。
よく見ると、彼らの着ている漆黒のジャケットには、ジャケットのデザインこそ違うがレスティの物と同じ、月桂冠を被った女性のシルエットのエンブレムが刺繍されていた。
「(・・・って事はアイツ等が・・・)」
エルヴィン団長やピクシス司令の言っていた“北”のお偉方、“声”の本体と同じレスティの上司。
正直言って、エレンは“北”に対してあまり良い印象を抱いていない。
エレンや、エレンの同期達を助けてくれた“声”やレスティには感謝している。
が、トロスト区襲撃まで“南”に対して知らん振りをし続けていたのだ。
向こうには向こうの事情があるのかもしれないが、力があるなら少しくらい助力してくれたって・・・
“北”の連中を観察している内に大分話が進んだのか、憲兵団がエレンの解剖を提案した。
「彼には出来る限りの情報を残してもらった後、我々の英霊となって頂きます」
「しかしエレン訓練兵の功績は無視出来るようなものではないのでは?
彼の所属した班は目覚ましい功績を挙げています。」
トロスト区でのエレンの単騎で巨人討伐数は、確か14体。
巨人化してからは、30を軽く越えていると聞いた。
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