コンコン
「起きてますか〜入りますよ〜?」
規則正しいノックの音と、間延びしたあどけなさの残る声が静寂の中響く。
同時にそれまで気怠そうに瞼を閉じていた焦げ茶の髪の少年が目を覚ました。
「失礼しま〜す」
部屋主の返事も待たず、これまた間延びした声と共に入ってきたのは、紙の束を抱えた小柄な青年。
不機嫌丸出しな眼で少年が青年を睨むが、まるで効いていない様子。
「起きてるって事は終わったって解釈でいいんですか?」
「・・・・・・そうじゃないなら意識は飛ばしたままだろう」
「それもそうですね」
朗らかに笑うと、青年は慣れた手つきで少年にコーヒーを淹れ、カップを差し出した。
少年は無言でそれを受け取ると、一口だけ飲んで机の上に置く。
別にコーヒーが不味かった訳ではなく、何時もの事なので青年も気にしない。
「・・・で、何の用?」
「おっと忘れてた。要件は二つです、一つは書類のサイン」
ボサッと書類の束を机の上に積むと、少年の機嫌は更に急降下した。
青年は気にしない。
「二つ目は・・・召集です。緊急の会議を開くってさ」
「やっぱそうなるな・・・」
面倒くせぇ・・・と前髪を掻き上げた少年は椅子から立ち上がり、立て掛けてあった黄金の装飾が施された黒刀をベルトに装着する。
どうせ会議が行われるのは、南の本部か内地のどちらかだ。
立体起動で飛んでいったほうが早い・・・豚共はいい顔をしないだろうが。
「一応、呼ばれたのは隊長のアンタなんだけど・・・」
「好きにしろ、お前一応副隊長だろう」
「よっしゃあ!!」
「・・・その前に寄り道するぞ」
「分かってますって〜!お姫さまの回収と負傷者の手当ですよね?」
ガッツポーズをして子供のようにはしゃぐ青年に、少年は遠く離れた地にいる甥の姿を思い浮かべた。
そんな上司を他所に、青年は独自に改良した立体起動装置を身に付け、いつでも飛んでいけるよう窓枠に脚を掛けていた。
「ほらー行くなら早く行きましょー!イエーガー隊長!!」
「ウィル五月蝿い」
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