『エレン先輩。動けますか?』
「うがぁ・・・ぁ・・・」
言葉では何言ってるか分からないが、言葉は届いているようで頷き返してくれた。
どうやら無事、強力すぎる力に自我を飲まれることなくコントロール出来ているらしい。
こちらの意思を察したらしく食い千切られた箇所を修復しながら、大岩の方を指差す。
その意味を正しく汲み取ったアルミンが皆に訳した。
エレンが大岩を運ぶ間、前方をレスティ、アルミン、ミカサの三人、
後方をライナー、ベルトルト、アニでエレンに近付く巨人の殲滅。
ジャン班は増援要請の伝令に、
サシャ、コニー及びその他の班は纏まって行動し、残りの巨人を引き付ける。
ライナー達にかなりの負担を強いることになるだろうし、ほかに精鋭部隊がいないのは心許ないが、迷っている時間はない。
言われてすぐにジャンが班員を連れて立体起動で飛んでいったのが見えたから、増援部隊が到着するまでそれほど時間は掛からないだろう。
「・・・じぅな・・・」
呂律は回っていなかったが、エレンが何を言おうとしたのかは分かった。
―-死ぬな-―
それはお前の事だ、死に急ぎやろうが。時間に余裕があればそう言っていただろう。
だが今は時間が惜しい。
皆それぞれエレンに敬礼を向けると、各々の役目を果たすべく散っていった。
『・・・ッ』
「レスティ!ダメだ、それ以上戦ったら死んでしまう!!」
「もういい・・・後は私がやる。だから貴方は下がって!」
足の傷が開こうが、
ヒビの入った骨が悲鳴を上げようが、
アルミンやミカサの静止の声が響こうが
レスティは構わず立体起動装置を駆使し、鳥のように空中を舞う。
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