―ああ、一つ言い忘れてた―「(何だよ?)」
―俺の部下を援軍としてそっちに送った。まだ卒業前だが使えるぜ―「(はあ!?おい、卒業前って・・・
『行くぞ!』聞けよ)」
勝手にエレンの腕を動かして刀身を掲げた“声”が、エレンの口で合図を出すと同時に、訓練兵達は一斉にアンカーを射出し、飛び出した。
突然の命令違反に戸惑う伝令係の駐屯兵の声を聞きながら、エレン達は建物の間を縫うように飛び回る。
どういう訳か、訓練の時よりも立体起動装置を自在に操れているような気がするのは、あの“声”から貸してもらった“声”の“経験”によるものなのだろう。
「(こんなん続けてたら、オレは一生素人じゃねえか)」
―身体で覚えるから問題ないさ―「(ふーん・・・・なあ、これってもしかしてオレ達中衛まで前衛に駆り出されて
『後ろに飛べ!!!』)」
エレンの口を使った“声”に、班員達は反射的に後ろの建物にアンカーを打ち、屋根の上に飛び移る。
直後、振動と共に前方の建物に奇行種が飛び付いた。
その姿を確認するや、エレンはアンカーを打ち出し、体を回転させながら遠心力を利用して項を削ぐ。
ついでにその下にいた7メートル級も始末する。
手のひらがビリビリする。
“藁の塊とは違うんだ。慣れろ”
怒られた(´;ω;`)
それはそうだけど・・・と心の中で“声”に返し、立ち上る蒸気に眉を寄せながら皆の所へ戻ると、何故か驚愕の表情で迎えられた。
オレ何か変なことしたか?
皆の反応に首を傾げつつ、とりあえず全員の無事を確認しホッと息を吐く。
“声”の指示がなければ、今頃この時点で既に何人か・・・考えただけで寒気がする。
すると正気に戻ったらしい班員達から、ワァッと歓声があがった。
「す、すごい・・・すごいよエレン!!」
「奇行種か・・・エレンの指示が遅れてたら間に合わなかったな」
「ホント助かったわ!ありがとうエレン!!」
オレの指示じゃないんだけどな・・・
複雑な感情を抱きつつも、これも自分の経験になるんだと顔には出さないように心がけた。
周囲を見渡すと、遠方で幾つか蒸気が上がっているのが見える。どうやら他の場所でも、着々と巨人を仕留めているらしい。
だが穴を塞がなければ数を減らしたところで意味がない。
「立ち止まっている時間は無い・・・行くぞ!!」
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