会場の中は明るくて眩しかった ほとんど家から出られない僕にとって此処は眩し過ぎた。しかし数分もすれば目も慣れた しかし、僕は舞踏会なんて初めてなので何をしていいか分からず、入口付近に立っていた。此処からは大勢の人が見渡せる、つい先程まで家に居た義母達も見える。 たくさんの人を見渡していると、僕は知りたくなかった事に気付き呟く 「メイド服なんて居ないじゃないか…。くそぅ……!」 みんな美しいドレスやスーツに身を包み、メイド服なんて一人も居なかった。それに入り口付近に立っていたのも駄目だった、入ってくる人にじろじろと見られてしまい視線が痛く顔が熱くなった。 思考が完全に停止してしまったところで目の前から低い男の声が降ってきた 「始めまして、美しいお譲さん?」 「はっ、初めまして…。」 「お一人ですか?」 「えぇっと…、その…。」 羞恥によって頭は回らないし、目の前の男性に声を掛けられてしまい、どう対処をしていいか分からずに焦る僕が居た。 どうやって、この場を切り抜けようかと考えていると、此方に近づいてくる足音と共に先程の男性とは違う声が僕の元に飛んできた 「すみません、彼女は僕と約束があるので」 約束なんてしたっけ?と思い俯いていた顔を上げると、そこには酷く整った顔をしている男性が居た。僕は誰か知らなかったけど、僕に声を掛けて来た男性は顔を青くして言った 「こっ、これは!失礼しました、王子様!」 おおお王子!? ってことは…この人が舞踏会の主催者で、この国で一番偉い人? そんな事を考えていると男性は顔を青くしたまま、そそくさと立ち去ってしまった。立ち去っていく姿を見て少し安心感を覚えて、僕は王子の方を向き深々と頭を下げた 「あっ、有難う御座います」 「いえ、お気にせず。お譲さんは大丈夫でしたか?」 「あ…、はい!大丈夫です!」 お譲さんと呼ばれて、自分は今女装をしているのを思い出した。そして緊張し過ぎて声が裏返ってしまっている事も今になって気付いた。 「お名前は?」 「えっと…、集です。」 「集さん、美しい名前ですね」 「有難う御座います…。その、王子様?」 やはり周りと同じように王子様と呼ぶのが妥当かと思ったが、それは本人によって否定された 「いえ、涯と呼んでくれて結構ですよ?」 「じゃあ…、涯さんと呼ばせて頂きます」 こうして僕は理由は分からないけど成り行きで、涯さん、もとい王子様と話すきっかけを得てしまった。 |