放課後の教室は人口密度は低いくせに外からの熱気やクラブ部員の騒がしい声で室内温度は予想以上に高かった 「……暑い」 夏も本番で教室の気温は50℃を越えていると錯覚してしまうほどに暑く、まさに夏が来たと実感できる日だった そんな日に俺は運の悪い事に日直で、不幸は重なるものなのか知らないが俺と一緒に日直をやるはずだった生徒は俺に当番を押し付け先に帰ってしまった。…明日会ったらぶちのめす、男子女子構わずに殴ってやる。 そんな事を考えていたのが悪かったのかさらにさらに不幸な事は重なって訪れる 「何しけた面してんだ?夏樹?」 「……チッ」 「おいおい、舌打ちするなよ。俺の親愛なるクラスメイトの夏樹くんよぉ」 「真顔で嘘を言うな。何しに来たわけ?俺の糞うぜえクラスメイトのアキラくんよ」 「仮にも年上に、その言葉遣いは駄目だぞ夏樹」 何故ココに来たんだ! と叫びたかったが、そんな事に体力を使うのも煩わしくて口を噤む。今しがた誰も居ない教室の中に入って来たのは、数か月前に転校して来やがったアキラ。25歳の高校生らしいが俺の中の印象は、胡散臭い友達が少ない奴だ。 「何か失礼なこと考えてないか?お前」 返事をするのはめんどくさいので無視。 日直の仕事である掃除もちょうど終わったところで、今から日誌を書くために俺は自分の席へ座って日誌を広げたところで暇なのか知らないがアキラがまだ声を掛けてくる 「一人で日直の仕事するのか?」 「……」 「俺が手伝ってやろうか?」 「……。」 「なーつーきーくーん!」 「……煩い!」 アキラは何なんだ。ほっといたらコイツ一人で延々と喋れるのか…?やべえ気持ち悪いんだけど。 俺は日誌の【今日の出来事】という今日合った事を書く欄に【山田が煩い】と一言だけ書いて日誌を閉じた。どうせ先生も本気で日誌なんて読んでないんだし別にこれでいいと思う。 日誌も書いたし、この糞熱い教室から出てしまおうと思い立ちあがったところで、頭の上に変な感触をしたものが乗っかった。恐る恐る触ってみると― 「…?」 ペットボトルのカルピスだった。俺の真後ろにはアキラが居てニヤニヤと笑った顔で言う 「お疲れ」 「……ありがと」 意外に優しいなと思ってしまっている自分が居た。頭の上に乗っかったカルピスの蓋を勢い良く開けて一気に飲み干す。冷えた液体が体内に入っていって暑さが飛ぶようだった。一口で半分ほど減ってしまったペットボトルにもう一度口を付けようとしたところで、今まで黙っていたアキラが口を開いた。 「あのさ、夏樹」 「ん?」 「それ、俺の精液だって言ったらどうする?」 「!?」 ブハッと口に含んでいた分のカルピスを思いっきり噴き出した。おかげで先程掃除したばかりの床が水浸しだ。俺は、目の前でやはりニヤニヤと笑っているアキラに掴みかかる 「お前何言ってくれてんの!?」 「冗談に決まってるだろ」 「冗談じゃねえよ、セクハラって言うんだよ!この国じゃあ!」 「そうか、俺の国では冗談だ」 「……殺す!」 アキラを本気で殴ってやろうかとも考えたけど体力の無駄だと即座に理解した。諦めて先程使った雑巾で、もう一度床を拭く事にした。 俺が床を拭くことに専念して居ると、いつの間にか廊下の扉の所に居たアキラが捨て台詞を吐くように言葉を発した 「そういえば…」 「……」 「お前に日直押し付けてサボってる奴はな、実は俺なんだぜ」 「…っ!」 反射的に立ち上がり扉の方へ視線を向けたがアキラは全力で廊下を走ったのか、もう居なくなっていた。 「あの糞インド…!明日覚えてろよ……!」 明日どのようにしてアキラを殴るか考えつつ床掃除を続けた セクハラだろ、ふざけんな! つかアキラ何しに来たんだよ、わざわざ来る必要ないだろ…。 Back |