自惚れる | ナノ




見つめるの続き



---



机に突っ伏しているとチャイムが鳴り響いた


「気を付け、礼」

号令が掛かり慌てて立ちあがって礼をする

次は昼休憩なのでランサーの所へ行って弁当でも食べようかと考えていた矢先に聞きなれた声が飛んでくる


「ペンドラゴンちょっと来てくれるかい?」
「え…?」

いつの間にか私の前に先生が居て不思議そうな顔をしつつ言う

「話があるんだ」
「あ、はい!」


冷静に、冷静に。
自分の中で声をかけながら先生の後ろをついていった




ついていった先は切嗣先生が根城にしている第4資料室だった

なんでも先生は片付けが出来ないらしく上の人に特別に専用の部屋を貰ったらしい。


「悪いね、汚い部屋で」
「いえ、大丈夫です」
「その辺に適当に座ってて」
「…はい」


座ってて、と言われたものの…この部屋座るところないんですが。床には大量の資料や分厚い本で埋まっていて座るスペースなんて無い

仕方なく入口から少し離れた所に立っておいた




「……」
「……」


ガタガタと物を漁る音だけが虚しく響き渡る

どうして無言の空間がこんなに気まずいんだろう。


変に意識してる自分が悪いのだろうか?




「あぁ、やっと見つけた」
「…え?」


沈黙が破られた!と安堵したのも、つかの間でカチリ、と音がした

と、同時に目の前が真っ暗になった




頭の中で軽くパニックを起こしていると

場所は分からないけど、どこからか先生の声が響いてきた


「あぁ、ごめん。電気が落ちたみたいだ」
「え、あ、そうですか!」
「大丈夫かい?」

「えぇ、大丈夫で―」


実は私は夜目が利かない
真っ暗になると周りが見えないため普段より気が緩んだりもする


しかし、だからと言って感覚が消えるわけない


大丈夫です。
と言おうとすると突然体が引き寄せられて口に暖かくて柔らかいものが押し付けられた

突然の事で頭が回らないが
必死で回転させると遅くなったが私の前に切嗣先生の気配がした


それも目と鼻の先で…。
私はこの状況に気付くが唇を塞がれているため何も言えない。



どのくらい経っただろう…。
しばらくして唇に押し付けられていた物は離れ、先生の気配も消えて電気が点く

私は赤くなる顔を隠そうとして余計赤くなりつつ、先生に告げる


「あの…!今のは…!」
「事故だよ、ただの事故」
「え…?」

「大丈夫だった?ペンドラゴンさん?」


電気が点いて目の前がチカチカする中で、先生は笑みを浮かべて言う

あぁ、つまりこれは…。


私は先生の意図を察して自らも笑みを作り告げる


「大丈夫です、それより昼休みが終わるので用事は後でも良いですか?」
「あぁ、悪いね。じゃあ放課後に」




扉を開けて足早に資料室を出てから、思考をまとめながら教室に戻る


あれは、確かにキスだった。

でも先生と生徒と言う都合上、事故という事で処理した…。


と、そこまで考えて頭の中で否定論を出す


いや、あれは本当にただの事故だったのかもしれない

暗闇で先生も周りが見えてなかったのかもしれない…。



考えれば考えるほど、まとまらない考えに廊下で一人「うあー!」と叫んで教室まで全力疾走した




考えれば考えるほど…泥沼になっていくのですが!



***



切剣です、誰が何と言おうと切剣と言い張ります

切嗣視点の話も書いてみたいですね、にやにや←