強がったふりのおとこのこ | ナノ




「学校に行って来ます、姉さん」
「気を付けてね、白龍!」

礼儀正しく礼をして玄関から出て行く白龍を見送る。

私と白龍は二人で生きて来た
父さんは早くに亡くなり母は再婚した家庭に付きっきり。白龍は義兄達に懐かず、毛嫌いしてしまい今は私と白龍の二人で別居という形になっている。

生活費は送られてくるし生きて行くには不満はないけど、母は一度だって私たちの事を心配はしなかった。私は、それほど悲しいと思わなかったけど…白龍はどう思ったんだろう。


ふぅ、と一息ついてから私も学校に行こうと支度を始めようとしたところで、ふと私の視界内に今あるはずのない物が飛び込んできた


「白龍ったら…、弁当を忘れて、」


自分で作った弁当を忘れるなんて…と考えれば、思わずふふっと笑みが零れた。やはり私の弟は可愛いな、と実感してから白龍に弁当を届けようという考えに至った。




***





高校には連絡を入れてから白龍の通う中学に足を運ぶ。

私も去年は白龍と一緒に通ってた中学校、初々しく頬を染めて制服に身を包む白龍が今でも鮮明に思い出せる。

思い出に顔を綻ばせつつ学校敷地内へ入り、そのまま職員室へと直行する。私の事覚えてる先生は居るかな、なんて考えつつ扉を叩いた


「失礼します」

「あら…?あらあら!白瑛ちゃんじゃないの!久しぶりねぇ」

「先生!お久しぶりです、先生も相変わらず御元気ですね」


丁度、去年の私の担任である先生が職員室に居た。私は笑顔を崩さず、先生に要件を話す。


「白瑛ちゃんったら、すっかり大人っぽくなっちゃって…!」

「そんな事は…。えっと、練白龍に渡したい物があるのですが…」

「練くん…に?」


はい。と短く答えて鞄の中にある白龍の弁当を手探りで探す。白龍はもう弁当を忘れている事に気付いてるのかな、なんて考えていると、先生から予想外の言葉が返ってくる


「練くん…、今日は学校に来て無いわよ?」

「――…え?」

「あぁ、この際だから白瑛ちゃんに伝えておくけど…。練くん遅刻と欠席が二年になってから多くてねぇ…。家庭訪問しようか聞いたんだけど、『それだけは!』って懇願されてねえ。それと――」


私が聞けたのは此処までが限界だった。

職員室に出入りする時の礼儀である挨拶さえ忘れて職員室を、それに学校も飛び出した。

毎朝きっちり同じ時間に、それも予鈴十分前には確実に教室に付くように家を出ている白龍が遅刻?一回だって休まずに家を出て行ってる白龍が欠席?


「どうして…っ」


白龍の行きそうな場所なんて見当もつかなかった。あの子は昔から自分の意思で行きたいと言う事は少なかったから、行きそうな場所という見当がつかない。

駄目元で携帯を取り出し白龍の携帯に電話を掛けてみる


『おかけになった電話番号は現在電源が入っていないか――…』

「…っ、」


電源を入れていないみたいだった。そんな気はしていたとはいえ、改めて実感すれば精神的に来るものがあった。

こうなったら白龍が居るかもしれない場所を一つずつ脚で探すしか…と思ったところで携帯がぶるぶると震えた。

私はディスプレイも確認すること無く、勢い良く通話ボタンを押した。


「白龍っ!?」



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