俺は今、情報屋としての仕事をしているわけでも無く自分の自宅の冷蔵庫の前で正座されられていた。 俺に命令したのは、俺の雑用係であるはずの正臣君。普段は基本的に俺に忠実で扱いやすいのだが…いまの正臣君はとてつもなく扱いにくく俺を怒鳴りつけている 「今日と言う今日は許しませんよ…!どういうことですか!」 「これには深い理由が…ね?」 「何がですかぁあああああ!!」 これは非常にまずい。どうやって目の前の正臣君の機嫌を直そう…。確かに今回、彼が起こっているのは俺のせいなんだけど…でも、いつものように決して悪意があったわけではないのに…。 「いや…その…あの……、」 「なんですか!!いつもあんだけ誰も聞いて無いのにペラペラと喋る癖に俺が聞いた時には、どうして喋れないんですかねぇ!?ねぇ、臨也さん!!」 「少し落ちつこう?正臣く…」 「これが落ちつけるわけ無いでしょう!?ふざけないでください。さぁ、早く弁解の言葉くらいは聞くんでどうぞ?」 「その…間違えて…。」 今日の正臣くんが異常に怖い。 凄くキレている。そりゃあもう凄く、とてつもなくキレている。それに悪いのは自分だと理解しているけど悪意があったわけじゃないので余計に辛い。正臣君は全ての原因を俺を怒鳴りつけながら告げる 「あぁ?どうやったら俺の楽しみにしていた銀座の高級プリンと近所のスーパーのプッ●ンプリンを間違えるんだよ!ふざけんなよてめぇ!」 「いや…波江がプリン買って来たって言ってて、小腹空いたから冷蔵庫開けたら銀座のプリンが目に入って…その……。」 「そうですか…それじゃあ仕方ないですね…。なんて言う訳ねぇだろ!」 最早、正臣君の面影が無いほどにキレてらっしゃる…! しかし、俺が今言ったのは全部本当の事だった。嘘いつわりのない俺にとっては珍しい言葉なのだが正臣君には届かない、届いてくれないのだ。 俺は今、正座して俯いているので正臣君の表情は見えないのだけど凄く怖いのは分かる、妙な圧迫感がある。つまり怖い しかし、急に圧迫感が消えた。 何事かと思い俯いていた顔を上げて正臣君の方を見る。 「臨也さんにはガッカリです」 「正臣くん!?ごめんってば!」 「謝って済むなら警察は要らないんですよ…臨也さん。」 「警察が出てくるような話でも無いと思うけど…いや、嘘です。心から申し訳ないと思ってる」 「もう…良いです。」 そう言って正臣君は本日何度目か分からない溜息をついて部屋を出て行き―… 「え、正臣君ドコに行くの!?」 「臨也さんにはガッカリです」 「それはさっき聞いた!そうじゃなくてドコに行くの!?」 「しばらく休暇を貰いますね」 「いや…、最近仕事忙しいからさ明日もちゃんと来てね?」 「謹んでお断りします」 「正臣君!?ごめんってば!プリンくらい直ぐに買ってきてあげるから帰ってきて!」 パタン、と切なく扉が閉まる 普段なら追いかけて説得するのだが今は…正座で足が痺れて歩けなかった…。 後日談( 全ての元凶 ) 「あら…喧嘩したのね」 「…波江。わざと間違えるようなモノ買って来たな」 「気のせいよ、被害妄想ね」 「やられたな…」 「ちなみに銀座のプリンは朝早くに売り切れになるから早めに買った方がいいわよ」 「波江買って来てよ」 「嫌、自分で行きなさい」 「…。最近のキミ嫌い……」 Back |