もっと傷つけよ | ナノ




(その顔が)の続き





「…っ!痛い、痛いよ…っ!」
「痛いか、そうか。」



涯はカッターを僕の右腕から引き抜く。引き抜く時、カッターの刃が肉と擦れ痛みが増し声にならない叫びが出る。

涯は僕の顎を持ち上げ耳元で囁くかのように言う


「泣けよ」
「はあっ…!…っ!やだっ!」


痛みに耐え声が思うように出ないのが反抗の意志は見せる。泣けと言われて泣くなんて嫌だ。そう思って必死に今にも溢れだしそうな涙を我慢した。

涯は凄惨な笑顔を消し言う


「俺の命令が聞けないか?」
「今の涯の命令なんて…っ!」


低くドスの利いた声に内心怯えつつも僕は強がりで反抗する
すると、涯は何を思ったのか僕の足の鉄球を外した

予想もしていなかった解放に張りつめていた緊張の糸が緩んだ。





それが駄目だった

再び先程刺された右腕付近に勢いよくカッターが突き立てられた




「うぁああああああああ!」




先程の傷も痛み新たな傷も痛む
僕は耐えきれず涙が流れた

緊張の糸が緩んだように、張りつめていた涙腺も壊れてしまったかのようにボロボロと涙を零す


涯は満足そうに凄惨に笑う。
笑顔のまま僕の腕から溢れる血を愛おしそうに指でなぞる

紅く染まった指のまま僕の頬に手を添え涙を掬い笑う


「お前は俺のものだ」
「…っ」
「お前は俺が傷つけてやる」



その言葉は冷たく響いていった








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確かに恋だったより