俺は今、屋上の扉の前に居た。 鍵がかかっているのを音が立たない様に確認し小さく微笑む 少年Bの策略 俺には好きな奴が居る 2年B組 帰宅部 桜満集 色素の少し薄いふわふわとしたくせ毛に幼さを残す童顔、高校生にしては小さな体躯を持ち男女関係なく魅了してしまう…まるで光の様な笑顔 そして、男 アイツの噂は常々聞いていた。 女よりも可愛い男が居ると(オマケで強力な用心棒が居るとも)聞いては居た しかし、俺はずっと前からアイツを知っていた。…きっと、アイツが知らないだろうけど――… 多分アイツが俺の事を知ったのは半年前だと思う。それでもアイツの記憶に残っているとは考えづらいが 半年前、授業を聞くまでもないがボンヤリと聞いていると、窓から執行部の面子とよく言い争いをしている不良グループが見えた。 誰が虐められているのかが見えず生徒会の権限を使い廊下へ出てみると、アイツが殴られ蹴られしているのが見えた。アイツは本来喧嘩が鬼のように強いのを俺は知ってる、しかし何故暴力を受けているのかが分からなかったが考えるより感情が高ぶり窓から飛び降りた 自分でも思っている以上にキレていたようで力一杯殴りイジメを止めたのを覚えてる 止めたのはいいが、あまりに全力でやり過ぎたせいで完全に引かれてしまったので罪滅ぼしのつもりで保健室に送った それだけ、だ アイツが俺の事を覚えているとは考えづらい、寧ろ嫌な記憶として分類されていそうなくらいだ しかし俺の考えは大いに間違っている事を数分前に知った 生徒会の雑務を4限を使って終わらし、片づけを数分で終わらした 「おつかれっ!」 「あぁ…、ありがとう」 いつの間にか生徒会室に居た書記のつぐみにコーヒーを貰い備え付けの椅子に座り一休みすると放送が聞こえて来た ざわざわと聞き取れないような雑音に近いものが聞こえ、放送室をまた不良達に占拠されたんだなと大体状況を理解している所でハッキリとした声が聞こえて来た 『…なんですか?』 「っ!」 とても聞き覚えのある…、というか陰から聞いていた声が響いてくる。この声は間違えようもないほどにアイツ…、集の声だった 「ねぇ、涯…?」 「待て、もう少し情報が欲しい」 「分かったよ!」 「念のために役員に招集命令」 「了解!」 つぐみに指示を出し放送を聞く事に全神経を使う 『っ…!?なんですか!』 『いや〜。俺ら今溜まってるからさぁ…!桜満君に抜いて貰おうと思ってぇ〜?』 『っ!?なんで…僕なんですか?』 『タイプだからぁ?』 『いや…、僕じゃなくても…。可愛い子はたくさん居ますし…』 『俺ら桜満君に抜いて貰いたいんだわ』 『えと…、僕好きな人居るんで!』 『ほぅ…、誰だよ?』 『いや…そのですね…』 『何?実は男が好きとか?』 『ち、ちがっ…う!』 『おいおい…まじかよ』 『あの…その、えっと…!』 『誰が好きなんだよ?あぁ?』 『いや、僕はその…』 『アイツか、前に邪魔しに来た副会長の恙神か?』 『っ!!!』 『おぉー、当たりだなぁ?』 「…………、」 「涯っ!?どうすればいい?」 「そうだな…。」 どうせ、もう少ししたら誰かが放送が垂れ流しになっている事に気付くはずだからな…、俺は思考を止めないまま早口でつぐみに指示を出す 「女子は生徒達の鎮静化、アルゴと綾瀬は教師共を抑え込んでろ。男子は放送室の不良共を捕まえて処分。退学まで視野に入れておけ」 「涯はどうすんの!」 「返事に返しに行くさ」 生徒会室を出て、どうやって集の居場所を特定しようか考えていると予想通りマイクに気付いたようで逃げるような音が響いてきた。多分、今の逃げる音は集なので何処に逃げたかの推測を本格的に開始する きっと…集なら安直に生徒は立ち入り禁止の場所に入っている筈だ、…逃げているなら尚更。放送室から近い立ち入り禁止の場所と言えば一つ思い浮かんだので、生徒会室に戻り生徒会のみ使えるマスターキーを取り出し集が居るであろう場所に向かう 生徒達の鎮静化は巧く行っているようで誰にも会わずに目的の場所…屋上に着く 鍵がかかっているのを音が立たないように確認して鍵を開ける 泣き顔の君に会うまで、後少し Back |