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ChocoLateLove



[ バレンタインについて ]


2月13日、明日はアレだ。バレンタインデーとかいう奴だ。周りは浮かれまくっている、見ていて殺意を覚えるほどに浮かれまくっている。死んでくれ、バレンタイン

しかし声を大にして言わせて頂きたい。特に、今そこで手作りチョコを期待している奴とか、手作りチョコを作ろうとしている奴、友チョコだの交換しようと話しているお前等


ここは、日本だ。


日本には仏教というのがあるだろうが、日本人たるもの忘れてはいけないことじゃないのか?


キリストに寝返るつもりか?
そうなのか?


今一度言わせて頂こう、ここは日本だ。だから、チョコとか渡してキャッキャうふふなんてしないでくれ。俺は日本を裏切れないからバレンタインなんて嫌なんだよ。察してくれ、察してくれたなら幸いだ。察してくれたならば、さっさと手に取った綺麗なラッピングのチョコを置け。買ってしまったのなら、今すぐに返品に行け。返品が不可能ならば、誰かに渡すこと無く自分で食べろ――人に渡すなんて勿体ない旨さだろ?それを人に渡そうとしてたんだぜ?

俺は何が何でもチョコは買わないし受け取らない。日本人として心に決めているんだよ。日本人の鏡だな、崇めろ

バレンタイン反対!
バレンタイン反対!
バレンタイン反対!





[ 三年二組 八田美咲 ]



「いやー、流石にそこまでやると俺でも引くわ。なんなのチョコアレルギーなの美咲は?それなら納得出来るけどさあ、でも引くわ」


数分前に配布された《学級だより》という学級内にだけ配られるプリントを手にした伏見はケラケラと笑ってプリントを読んでいた。担任が感動の涙を流しながら配布したプリントには、それはもう素晴らしい論文が書いてあり感動し過ぎて俺も涙が出そうだ

そして、その《素晴らしい論文》を書いた張本人である偉大な人物は顔を青く染め上げて死んでいた


「…………………」

「おーい、美咲先生?偉大な論文を書いた美咲先生?体の調子が優れないんですかあ、大丈夫ですかあ?」

「……うっせえええええ!お前はっ、さっきから楽しんでんだろ!」


ただの屍から生き返った偉大な八田美咲先生。美咲は唸る…というよりは呻くように声を上げる。偉大な人物は変わった人らしい


「だあってよお…、まさか……リッキーがバレンタインをここまで嫌いだなんて考えなかったんだよ。プリントにまでするとか…どんだけ……。」

「あの人いかにもモテそうに無いだろ?きっと同類が出来たと思って喜んでんぞ、あの人」

「同類じゃねえし!」


ちなみにリッキーとは、担任である力山先生(独身男性、38歳、彼女いない歴=年齢)である

美咲は今しがた言われた言葉に心折られたのか、再度ダウン。二回目だ、この様子だと後一回はダウンする可能性が高い


「バレンタインなんてバレンタインなんてバレンタインなんて……、滅びろ。滅びてしまえ!滅びのバーストス●リーム!」

「…やれやれ」


ガッと勢い良く顔を上げたかと思えば、懐かしい技名を叫んでいた。――何から何まで残念な奴だな、黙ってればコイツだってモテるのになあ…と伏見は思うが口には出さない。出したら、その瞬間に騒ぎだしそうだ(要は煩いのが嫌なだけである)

伏見は美咲先生の偉大な論文を、もう一度じっくり読んでみる。すると、ある一か所に視線を奪われた。最後の方に書いてある『俺は何が何でもチョコは買わないし受け取らない。』の所だ

胸の内に溜まった疑問を解消して貰う為に、伏見は美咲に質問を投げた


「なあ、ここの『俺は何が何でもチョコは買わないし受け取らない。』の所で聞きたい事があるんだけどさあ」

「んだよ、俺はチョコ買わないって宣言しただけじゃねえか。――受け取らないって言うのは若干見栄が入ってるけどな!わりぃかよ、畜生!」

「別になんも言ってねえだろうが、早とちりすんな馬鹿。……つまり、これってさあ」


美咲の首が傾げられる、伏見の言いたい事が想像もつかないのだろう。残念な頭だと一瞬過ぎるが、やはり伏見は口には出さなかった

伏見は美咲に対して
至って普通に質問した


「美咲はチョコを買わないけど、作ってはくれるってことだよなあ?」


とまあ、普通に。
真顔で普通に言い放ってしまった

当然ながら。
美咲の反応はというと


「作らねえよ!?!?」


と一言だった。それ以上に簡単な言葉が無かったのだろう、至ってシンプルに伏見の質問だけに答えを返した

伏見の今の質問に付け加えて言葉を返すならば


「大体、俺は途中の文章で散々チョコを買うな作るな渡すなと書いていただろうが。どうして文章を書いた俺がチョコを作って渡さねえといけないんだ。ふざけんなよ眼鏡野郎め、目だけじゃなくて耳も悪りいのか!あぁもう顔がうるせえんだよ!」


と、言う感じだ
勿論、そこまで口を開く気にはならないので美咲は伏見を一睨みする事によって感情を伝えていた。

傍から見れば見つめあっただけなのだが、伏見がやれやれと言った様子で肩を竦める所を見ると伝わっているようだ。これで伝わっているのだから凄いとしか言いようがない

伏見は美咲の言わんとしている事を察した後に、物凄い速さで言葉を並べ始めた


「でもさあ、これ自分の論文の締めに書いてんじゃん?締めっていうのは筆者が一番伝えたい事を書くって小学校の授業でも習ったよなあ?まさか忘れてるわけじゃないだろ?それで、だ。てことは、美咲先生の論文には作るな渡すなは書いてねえし、やっても良い事なんじゃねえの?寧ろ書いてないなら、やるべきことだと推奨しているようなもんじゃないか?どうだ?」

「…そ、そんな!そうだったのか!」


伏見の捲し立てるような言葉に、驚きを隠せていない美咲

そんな美咲を見て伏見は確信を持つ事になる――コイツは正真正銘の馬鹿であると。こんな意味の分からない、自分で言っている最中に理論が崩れ始めた話で納得するなんて…これを馬鹿と言わずして、なんと言うのであろう?

しかし、そんな事は一切口には出さず、伏見は自分の目的の為に美咲を悩ませるべく言葉を告げた


「――だから、明日は俺に手作りのチョコくれよ。手作りな、手作り。良いよなあ、美咲せーんせ?」

「え、あ、その…、えーと」

「素晴らしい論文書いてんだから。期待してるからな。――美咲の手作りチョコレート」


美咲からチョコを貰うのが目的である伏見は美咲の耳元で実に甘美的に囁いた。美咲は様々な葛藤に包まれながら、本日三度目のダウンをした。一度目と二度目と違う所と言えば、



――顔が燃え盛る様に熱かった所だけだろう



0214‐KissKissKiss!
どうしてもチョコが欲しい猿比古とお馬鹿な美咲のバレンタイン前日の話






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