Magi |
「ノート貸して」 珍しく俺の教室に来たかと思えば、開口一番にコレだ。俺は出来る限りの悪態で貴重な休み時間を潰しに来た人物に返事を返す 「またかよ、いい加減に自分でノート書く習慣くらいつけろっつの…学習ねえなあ、ジュダルは」 「今日さあ俺のクラス、ノート提出なんだわ。んで、出せなかったら居残りと来た!貸してくれんだろ?アリババくん」 疑問形の癖には妙な圧力がジュダルにはあった。ノート貸すくらいの事は別に良いんだけど、簡単に貸すのは癪に障る さあて、どうしたものか 足元見て滅茶苦茶な要求でもしてやろうか。…いや、怪我はごめんだから諦めよう 仕方が無いので、机に戻ってジュダルの元まで戻る。そのまま、癪ではあるがノートを差し出した 「おー、さんきゅー!」 「どーいたしまして…礼を楽しみにしてるからな!」 今度奢ってやるよ、と言う機嫌の良いジュダル。こうなったら高いもの食ってやる、財布からにしてやんよ! キーンコーン… 予鈴もなりクラスに帰り始める生徒が多い中で、未だに扉の前でただずんでいるジュダル 「……帰らねえのか?」 「うーん、なんつうかなあ……。物足りねえ感じがするんだわ」 「物足りない?」 おう、と短く返してから何かを思案するように神妙な顔をするジュダル 正直、意味が分からない事この上ないし、そろそろ席に戻りたいのだがジュダルが帰る気配がない以上は流石に…。 「あ、あのー」「なあ」 俺が話しかけようとしたのと同時に思案を止めたジュダル。ハモったのが地味に恥ずかしい 俺が一人で悶えている中で、ジュダルはハモった事にも気付かないまま言葉を続けた 「礼は、こんなもんで良いか?」 なんだなんだ、旨いものか? と、軽口を叩こうとした所で不意打ちも不意打ち。予鈴が鳴り教室にはクラスメイトの八割が揃っている状況でジュダルは俺の唇を掠めるように――なんて生易しいものではなく、思い切り奪ってくれていた。グッ、と噛み付くような口付け 「……っ、!」 良気が出来ない 死ぬほど恥ずかしい 穴があったら入って埋まりたい、埋めて頂きたい! 抵抗しようにも馬鹿力のジュダルが強く強く、そりゃあもう痛いほどに強く顎を固定しているので逃げだせない キス、が礼なんて 聞いた事ねえよ、絶対にお前がしたかっただけだろッ 永遠に近いくらいの時間が過ぎた後に、授業開始のチャイムが鳴り響く。すると、ジュダルはなんともあっさり俺の唇を解放した 離れたと同時に後退り距離を持つ。そして悪い事をした自覚がなさそうなジュダルに出来るだけキツく言ってやる。 「なにすんだよ!!!!」 「なにって…、キスだけど?そんくらい分かるだろ?」 「そういう意味じゃねえよ!そうしてキ…ッ、キスなんて、したんだよ!」 ジュダルは俺の言葉に意味が分からないといった様子で首を傾げた後に、呆れるほどに単純明快という感じで 「そりゃあ…、したかったからに決まってんだろうが」 と、言った。 言いやがりました。 酷く単純に分かりきった答えを面倒ながらに返すように、普通に告げた ふざけんなよ、クラスメイトの視線が死にたくなるほど痛いんだぞ。どうしてくれる、一発殴って… 「席につけよ、もう授業は始まってんぞー。」 ジュダルに一発入れてやろうと決めた所で、なんというバットタイミングか、物理の秋山先生が来た。先生に呆気を取られている内に、ジュダルは惚れ惚れするような素早さで自分の教室に戻って行った 「……あのやろー、」 後で覚えておけよ なんて考えつつ、刺さるようなクラスメイトの視線を笑って受け流しながら席へと戻った 二度と会いに来るなよ 教室には絶対に来るな - - - - - - - - - - 学生恋愛って素敵、青春って素敵ですよね(^ω^) ← |