ゴッと鈍い音が頭部に響けば、殴られた勢いで道に倒れ込む。赤の焔は、やっぱり強力だなあ…ノーガードで受ければ糞痛いし意識が飛びそうだ
「裏切りもんが…、」
低いドスの効いた美咲の声が遠くから聞こえてくる、美咲のこんな声が聞けるだけで満足だな。それにしても至近距離に居るはずなのになぁ、
…おかしいな、本当に
「みさき、」
「――名前で呼ぶな!」
激昂して横たわっている俺に対して馬乗りになる美咲
抵抗など元よりする気にもならず、美咲にされるがままにする
「殺すか?俺を」
「……当たり前だろーが」
少し躊躇いつつ言う美咲
美咲は怒りに満ちたようで、悲しみにも溢れているような目で俺を見て――そのまま俺の首に手をかけた
「、死ね…猿比古」
「…っ!みさき、ぃ。」
息が出来ない、苦しい。
美咲の首を絞める力は、緩やかに強みを帯びて行く
もう少しで、死ねる。
「……は、ははッ。」
乾いた笑みを浮かべれば、美咲は戸惑った様な顔に表情を変化させ、そのまま首を締め付ける力が弱まる
体が酸素を求め、空気を吸い込むと少しだけ楽になる。楽になってしまう。
駄目だよ美咲、
ちゃんと殺意を持って俺を殺してくれないと、意味が無いだろ?俺だけを死ぬまで思い続けてくれないと、
俺が殺される意味がないだろう?
なあ、美咲?
殺意を持って俺を殺して
今度こそ俺から逃げられないようにしてやるよ
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