7月20日は俺の誕生日だが、誕生日会は19日の今日にやった。明日は平日で学校と言う事もあり、一日早い今日に祝って貰った。
欲しかったゲームや、特に嬉しくない参考書など。
いろいろと貰って満足感が充実している中で、眠りにつくわけでもなくベットに潜り込んで携帯ゲーム機で遊ぶ
だらだらと過ごしていると、携帯がピピピと鳴った。
あぁ、そう言えば誕生日って事でアラームを仕掛けていたんだった。すっかり忘れていた、カチカチと操作してアラームを止める
ピリリッ
と、止めた所で今度は着信が来る。こんな夜中に誰だと思えば、ディスプレイには【猿比古】の文字。猿比古から電話が来るなんて珍しい、と思いつつ着信に応じる
「どしたー?」
こんな時間に。と付け加えようとした所で、通話口から早口で捲くし立てられるように声が飛んで来る
「誕生日おめでとう、今お前ん家のエントランスだから降りてきて」
「は、ちょ」
異論を唱える前にプツりと途絶える通話。
あぁ…もう意味が分からん!普段の悪戯か?いやでも、本当に待ってたらアイツ待ちぼうけちまうよな…。……考えててもキリがねえ!
「母さん!ちょっと俺出て来る!」
「美咲!?あんたこんな時間に何処に行くのよ!」
「ちょっとエントランスまで!直ぐに帰るから!」
母さんの制止を振り切って家を出る。蒸し暑い外の熱気と共に俺は全力で走った、…といってもエレベーターのある所までだけど。
「おせーよ、馬鹿」
エントランスに行ってみると不機嫌そうな猿比古の姿が本当にあった。驚きのあまりに瞬きを数回してみるも幻覚じゃない。
本物らしい、
幻覚じゃなさそうだ。
猿比古は洒落たパーカーを来て壁に凭れかかっている。
「こんな時間になんだよ」
猿比古の狙いが未だに分からない、こんな夜更けに訪問して来て暴言吐いて…なんだコイツ。知り合いでもなけりゃ蹴飛ばすな
猿比古は俺の発言に哀れみの視線を向け、更には深い深いため息を落とす…喧嘩売ってんのか!
「さるひ…」
「最初に言ったじゃん、誕生日おめでとうって。」
続けて猿比古はパーカーのポケットをガサガサを漁り始める、…ここまで来れば俺だって流石に分かるし、騒ぐほど野暮ってわけでもない。猿比古の次の行動を落ちついて待つ。
猿比古は少し照れくさそうに顔を赤く染め、ポケットの中から取り出した小さな袋を俺に向かって投げつけ…え、投げるなよ!
「お、っとおお!」
猿比古のコントロールの良さのおかげで落とさずに済む…いや投げるなよ。落としたらどうすんだ、折角の猿比古からの…プレゼントなのに。
開けても良いか?と聞けば、こくりと首を縦に振る。高鳴る胸を鎮めながら、小さな袋を開けてみると…銀色の輪っかに小さな赤い石がついたブレスレットが入っていた
「え、あ…ありがと!」
「どーいたしまして、じゃーな」
くるりと踵を返して背を向ける猿比古。え、ちょ、本当にプレゼント渡すためだけに来たって事か…?そんな馬鹿な、
猿比古を追いかけようとすると同時に鳴る携帯、見れば母さんからで「早く帰って来なさい」の一言。そんな事をしているうちに、猿比古の姿は見えなくなっていた
「帰るの早えーよ…。」
そう言えば、猿比古の両親は放任なんだろうか?こんな時間にフラフラ歩き回る猿比子に何も言わないのか……と、自分が今しがた母親に怒られたので少し思った。
猿比古から貰ったブレスレットを握りしめたまま、エントランスを後にした。
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自宅付近編は五つの話を繋がった話にしようと思っています。とりあえず今回は布石だけをチラっと落としておきます。
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