誰も知らない特別授業 | ナノ


「せーんせぇー、休ませろー」

軽い調子で保健室を尋ねれば、待っていたと言わんばかりの様子で御幸先生が椅子に座っていた。御幸一也、確か年齢は二十歳くらい。俺たちと大して変わらない年齢で保健室の教諭をしている、整った顔に愛想の無いクールな感じが女子生徒に人気だ。御幸先生を本気で狙っている女子生徒の噂も結構聞く、俺のクラスにだって何人か居たくらいだ。

「おっせえな、もうちょっと早く来てよ。栄純くんっ?」
「授業サボんの大変なんだよクソ教師が、名前で呼ぶな気色わりい」
「俺は保健教諭だから関係ないんだよ」

いや関係あると思うけどな
だって御幸先生…いや、一也先生は。
先生は楽しそうに薄気味の悪い笑みを浮かべた状態で俺に近づいて…というよりも、俺の後ろの扉に近寄る。そのまま、がちゃりと鍵を掛ける。これじゃあ緊急の生徒が来ても帰ってしまうのに、先生は躊躇いもなく鍵を閉めた

「先生さぁ、もうちっと生徒の事を思いやってやれば?」
「思ってやってんだろ、栄純くんの為に閉めてるんだぜ?」

俺の為、先生の為。要は互いの為に鍵を掛けているのだ。
誰にも見られない様に、誰にも知られない様に。今から俺は、先生を本気で狙っている女子生徒に殺されてしまうような事を先生と一緒に行う。こんなことしてるのバレたら、きっとクラスの女子に殺されちまう。そんなことを。

「せんせー、」
「先生じゃねえだろ、ほら……言って?」

グッと自分の方へ俺を引き寄せて、俺の目を間近で見つめて来る。黒縁の眼鏡の奥から覗く切れ長の瞳が、ギラついているのが分かった。ギラついた瞳で捕えられた俺は、既に逃げる術を失っていた。先生は、自分の存在を刻むようにして禁断の一線を越えさせる。

「一也せんせ、……どう?合格?」
「良く出来ました」

そのまま躊躇いなく重ねられる唇。俺は拒絶すること無く、先生からのキスを受け入れる。バレた瞬間のスリルを味わうかのように、先生と生徒なんていう関係で一瞬で蕩けてしまうようなゲームを始めた。
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