002/2 | ナノ




死ぬ気で猿比古の腕を掴んだまま走って、俺はセプター4まで来ていた

…帰りてえ
大嫌いな青服の連中がゴミのように居やがる…、もうやだ助けて尊さん


「おい、猿比古」


大きな門の前で一旦立ち止まって猿比古を呼ぶ、勝手に敷地内に入るのは怒られそうだし面倒そうだ

ここは一つ、猿比古の顔を使って何事もなく、事を荒立てないように中に入ろう


「あ?さっさと入れよ」

「いやー、流石に俺が勝手に入るのは不味いんじゃ…」


「おや?伏見くんではありませんか、どうしたのですか?」


ないか?と疑問形を付けて完璧な台詞だったのに、そこに無粋な声が割り込んで来る

聞いた事は数少ないが、一度聞けば忘れる事が不可能そうな声。粘着質で猿比古を思い出される声で、猿比古よりも意地が悪そうな声

冷や汗が止まらない中で振り向いて見れば、にこやかに笑みを浮かべる青の王が居た。


「ん?一緒に居るのは…吠舞羅の……」

「人違いです貴方が思っている人物じゃないです、ただの犯人です」


視線を逸らしながら早口でまくしたてるように言えば、青の王は俺を痛いほどに見てくる。

関わりたくねえ!

そうだ、猿比古!
猿比古なら助けてくれるんじゃないか?青の王に俺の身元がバレないように粋な計らいを…


「吠舞羅の八田美咲です、器物破損と公務執行妨害で連行しました」

「てめええええええ!」


粋な計らいどころか、盛大に正体をバラしてくれていた。

青の王からの視線が更に痛い、この状況から一秒でも早く逃げてしまいたい。助けて尊さん、この二人嫌過ぎる

青の王は悩みこむように顔を伏せた後に、おそらく営業用であろう綺麗な笑みを浮かべた


「器物破損…とは、何を壊したのですか?」

「さるひ…伏見の眼鏡を不慮の事故で踏みつけました」

「おい、美咲。なんで名字で呼ぶんだよ、別に名前で呼んでくれて構わねえのに」


うるさい猿比古、黙ってろ
俺が自分の罪状を自分で語る(あれ、どうしてこうなった?)と、青の王は納得の行ったように「成程」と呟きを洩らす

何を言われるのかが怖い…、

まさか牢獄行き?
いやいや!たかだか眼鏡で…、無いとは言い切れないから余計に怖い。あぁ尊さん、助けてください


「伏見くん…、君は本当に…」

「なんすか室長。俺が連行して来たんで、俺が管理しますから室長は手を出さないでくださいよ」


猿比古に管理されるのは癪だが、青の王よりはマシな気もするので黙っておこう。つーか、今の二人の会話に割り込みたくねえ


「まぁ良いです、伏見くん…眼鏡が壊れたんでしたっけ?」

「そうです、見りゃ分かるでしょう」


態度悪っ!
コイツ…これが上司に対する態度か!ぜってーおかしい、青のクランの猿比古への許容が広すぎる。

まぁ会話に割り込みたくねえから何も言わねえけど、繰り返すようになるが関わりたくない


「でしたら、私の眼鏡を貸しましょう」

「は?」


そう言って自分の眼鏡を外して、猿比古の方へ差し出す青の王。

猿比古は意味が分からないという顔をしている、…凄く癪ではあるが俺にも青の王の言いたい事が分からん

青の王は、至って真面目な調子で言葉を続けた


「大体の状況は予測できました。伏見くん…こんな門の前で八田美咲とくっついている姿を見せつけるのは止めなさい、近所の評判が落ちます」

「…チッ」


近所の評判なんて気にするのかよ、青の王。

猿比古は舌打ちをしてから眼鏡をかけた。
…上司に舌打ちまでするのか、青の王は怒っても良いと思うぜ俺。

縁なし眼鏡を猿比古がかければ、なんかこう…物足りないとでも言えばいいのだろうか?要約すれば笑える


「…室長、これ度があってないです」

「そうですか、なら私の予備を貸しましょう。」


ついて来なさい、と青の王。
猿比古は、またも舌打ちをしてから俺に「ついてこい」と命令して来た。


室長にナンバー3の猿比古と一緒に敷地内へ入る

…結局、凄く目立ちながら敷地内へと入る事になってしまった。



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セプ4眼鏡族は面倒くさい奴ばっかりな気がする







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