猿比古の眼鏡が死にました | ナノ




001


いつものこと、だった

いつものように猿比古を見つけたので、後先考えること無く殴りかかった


ところまでは良かった
問題は、その後に起こった


「くったばれぇ!」
「は、ちょッ、」


勢い良く背後から殴りかかれば、猿比古は本当に油断していたようで紙一重と言った様子で俺の攻撃をかわす

かわされたか…と思いきや、猿比古のスカした顔を掠めるように当たった

カツン、と黒縁の眼鏡が地面に落ちる


ここからが問題だ


落ちた猿比古の眼鏡が、なんという運命の悪戯か、はたまた嫌がらせか、俺の着地点に転がって来る

当然のことながら、

猿比古の視力と言っても過言では無い眼鏡を、ぐしゃりと踏みつける。


「「……あ、」」


二人揃って間抜けな声が上がる

踏みつけた方の脚を恐る恐る上げてみれば、粉々になった猿比古の眼鏡

どうしよう、
これは、もしかして…。
非常に不味いんじゃないか?

答えは問うまでもなくイエス

現に猿比古が怖い
何も喋らないし、輪に掛けて無表情

これは非常に…、


「おい、」
「は、はいっ!?」


唐突に声を発せられると思わず声が裏返る(だって怖いんだもの)

無表情のまま僅かな距離を詰めて来る猿比古、普通に怖い

カツカツと音を鳴らして、此方に来たかと思えば、おもむろに俺の肩を強く、それはもう強く強く掴んで告げる

低く低く、ドスを利かせて
…恐ろしい以外に言葉が無い


「美咲」
「ななななんだよ。」

「八田美咲、器物破損及びに公務執行妨害にて連行する」


猿比古のマジギレに言葉を無くす。怖いんだけど、そして逃げたい!肩が痛い!

俺が唖然とし、言葉を失っていると追い打ちを掛けるように猿比古は冷たく言い放つ


「返事は…、返事はどうしたァ!あぁ!?」
「はっ、はいっ!」


反射的に、本能的に、
間髪いれずに返事を返す

だって怖いんだもの
これ以上ないほどに猿比古が怖いんだもの、仕方ないじゃないか

猿比古は眉間に皺を、これでもかと言うほどに寄せる

目つきが悪すぎる
元より悪いのが、更に悪いな
軽口のつもりで言いたいけど、今の不機嫌オーラ全開の猿比古に言えない

言えるわけがない


「あ、あの…猿比古?」
「んだよ、さっさと歩け」
「あ…歩くって、どこに?」


完全にパニック状態になっている俺に、猿比古は普通に告げる

普通に、至って普通に
当たり前の事を再確認するかの如く

何を言ってんだ、と顔に書いたまま猿比古は告げた


「セプター4に決まってンだろ、お前は今、犯罪者だっつの」

「…そ、そうですよねー」


そんなわけで、

お巡りさんに逮捕されました



−−−−−


実際は器物破損ってレベルじゃないよね、普段やってる事って。








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