自分で出した答えなのに | ナノ




「花火しようぜ」


一瞬、美咲が何を言っているのか理解できず呆けてしまう。何言ってんだろう、コイツは

今日は大晦日

年末と言うだけで大々的に特番が組まれ、特に面白いわけでもない特番を延々とテレビが垂れ流す日だ。


俺は美咲と一緒に暖房のかかった暖かい部屋に居た。二人掛けのソファーに並んで座り、美咲の希望で紅白を見ている。

大晦日は紅白と美咲の中では決まっているらしい、俺はガキ使を見たかったのに…。

どこかで聞いた事はある歌が流れている所で、美咲は唐突に花火をしようと言いだした。


「なに言ってんだよ大丈夫か?頭が、」

「いや、だからさ!花火しようぜって言ってるだけじゃねえか!」

「どうして花火するって思考に至るんだよ、紅白見たいって言ったの美咲だろ」


俺はガキ使見たかったのに
と愚痴を零せば、美咲は視線を逸らしながら言葉を続けようとする。


「いや…えっと…、」

「大体、花火なんて買ってないだろ、考えて発言しような」

「花火ならさ、夏休みに買った分が残って無かったっけ?」


あぁそう言えば。
確かに残っていた気がする、今年の夏は終わりに向かっていくに連れて忙しかったんだっけ(もっとも、忙しかったのは美咲が課題を終わらせて無かったからだけど)

しかし、どうしてそれを今やろうと言う話になるんだ。くっそ寒いのに、馬鹿なのか?馬鹿なんだな、


「ぶっちゃけ暇じゃね?」

「まぁ、暇だけど…、外くっそ寒いから出たくねえんだよ」

「花火すりゃ寒さも飛ぶって!なぁ、やろ?」


パンっと手を目の前で合わせて頼み込む美咲、可愛すぎて断れないんだが。

それより美咲の「やろ?」が凄く卑猥に聞こえる。俺の耳がおかしいわけではない、美咲の言い方が誘ってるようにしか聞こえない


「…もっかい言え、そしたら一緒にやってやる」

「え、えぇっと…、なんて言ったっけ俺?……一緒に、しよ?」

「分かった」


しよ、なんて反則だろ
俺の美咲は本当にエロ可愛い、思わず後数回は美咲で遊ぼうと思ったのに反射的に許可してしまった。



 xxx




「寒い寒い寒い寒い…」

「寒いって言ってるから寒いんだぜ!ほら、火の準備早くしろよ!」


やっぱり外は正直引くほど寒い、早くも帰りたいんだけど。

公園で花火は禁止になっているが…まぁ良いか。見つかったら逃げれば良いだけだしな

美咲は元気に花火の準備をしている…、アイツ感覚狂ってんじゃねえのかな。まぁ狂ってても美咲は大好きだけどな、美咲可愛い可愛い

あぁそうだ、美咲の事を考えてれば寒さなんて感じないかもしれない。

美咲、美咲美咲
みさきみさきみさき


「みさきミサキ美咲…」

「何回も呼ぶんじゃねえよ、気持ち悪い」


あぁ、声になってた
公園のベンチに腰かけて美咲を見つめる、楽しそうに準備を進める美咲。

なんというか、
美咲と居ると毒気を抜かれてしまう、苛々していても何をしていても許せてしまう。

理由は、…分からない
けど、


「うーっし!打ちあげんぞ、見とけよ!」

「ていうかさぁ、手持ち花火する筈じゃなかったっけ?」

「……湿気てたんだ」

「……ばーか、」


少しだけ拗ねる美咲に手招きをすれば、打ち上げ花火に火を付けて俺の隣まで小走りでやって来る

美咲が隣に座ったと同時に暗い空に打ちあがる大きな花火。

キラキラと輝いてて、
ふと美咲の方を見てみれば、心底楽しそうに笑う美咲が隣に居て。



やっぱり俺は、美咲の事が。











 xxx






「伏見、寝るな!」

「チッ…、寝てねえっすよ。淡島副長」


淡島副長に間髪いれずに反論する、軽く意識が飛んでたけどな。

バキバキと嫌な音が肩から響く、大晦日まで仕事漬けって…おかしいだろ普通に考えて


あー、だりぃ。
去年の今頃は何してたっけな…。


去年の大晦日は確か…
あぁ…美咲と一緒に花火やってたんだっけな、寒かったけど楽しかった――今思えばな。

今でも寒いのは死ぬほど嫌だけど、美咲と一緒だったら耐えれんだったよなぁ


「みさき、ミサキ。」


名前を呼んでみると少しだけ、あの日の温もりが蘇った気がした




自分で出した答えなのに
美咲が居ないと凍え死んでしまいそう

−−−


ぬるっと続く予感










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