(
これの続き )
「っ、くそ!あの野郎…明日学校で覚えてろ…っ!」
「つーか、どうすんだぁ?俺達、顔見られちまったぜ?」
「そりゃあ…、なあ…、」
公園から出て行く柄の悪い三人は、この辺りでは有名な不良だった。
悪い事は大抵して来たのではないかと思える三人は、去年卒業した一人の女性を手に入れるために、一人の後輩男子に暴力を振るっていた
今日は運悪く失敗したが、明日からはまた同じような事をしようと企んでいた三人は近場のゲームセンターに向かう。
「練の野郎…、」
誰というわけでもなく三人のうちの一人が呟いた言葉に、思いもよらぬ方向から声が帰ってくる
「呼んだぁ?」
「――誰だ、てめー!」
三人の目の前に立ち塞がったのは、この辺りの高校の制服に身を包んだ女子だった
しかし一般的な着こなしはしておらず、スカートは短いしカーディガンはピンク。濃い化粧をしており、全体的にチャラい印象を与えさせる美少女だった
少女は片手に持っていた黒い物体を口元まで持って行き、三人の男を見て言う
「対象発見したわよぉ、」
男達は疑問に満ち戸惑いを隠せていなかったが、少女が可愛いという事に気付けば下卑た笑み少女に近づ――
「あはぁ…ッ!殺っちゃって良いんだよねっ!?」
「……下衆が」
くことは出来なかった。
突如として現れた二人組の男が三人のうち二人を殴り倒していた。
残った一人は突然の事についていけないのか、仲間がやられていくのを呆然と見つめる。時折ぐしゃっと骨が折れたのではないかと思わせる音や、劈くような悲鳴が響き渡るが、男は何もできず呆然と立ち尽くしていた
「あれぇ…、もう動かないじゃん、つっまんないの!」
「もう一人、居ますよ?」
ギラついた目で男の方を見る二人組の男達に、男はヒィと情けない声を上げて一目散に逃げ出した
何だよ、アイツ等と男は呟いた。喧嘩の腕には自信があったはずの二人が、あっさりとやられてしまった。ヤバい、逃げろと防衛本能が働き男は必死で逃げる。
必死で逃げている男は、周りが見えていなかったのか通行人にドンと勢い良くぶつかるが謝る事もなく、そのまま走ろうとする
「……」
「ってーな、どけ!」
暴言を撒き散らし逃走を続けようとする男だったが、脚が前には進まなかった。
今しがた、ぶつかった通行人に手首を強く強く握られていた。
通行人は冷めた声で一言だけ言い放った
「報復活動、という物を知っているか?」
知らねえよ、と男は言おうとするも次の瞬間にはもう、喋れなかった。
顔面に強い衝撃が走り、数秒遅れてから目の前の通行人に殴られたのだと男は理解した。鼻や歯が折れる音を男は他人事のように感じた、
意識が朦朧とする中で、ふと思い出した事がある。
この地域には最強とも言える四人の兄弟が居るという突拍子もない噂話。彼等の名前は練で、そういえば後輩のアイツも練だったな。と、走馬灯のように記憶が蘇り、意識を手放した
「流石です、紅炎兄様」
通行人役を演じていた紅炎に紅明が称賛の言葉を送れば、紅炎は鼻を鳴らして笑った。紅明に続いて紅覇と紅玉も後ろからついて来る。
紅覇が紅炎の姿を見るや否や、指をさして声を上げる
「炎兄さあ、仕事中に来るなんてヤバいんじゃないの?」
「普通に考えてヤバいわよねえ、」
紅覇に続いて紅玉にも指摘された紅炎は、思い出したように腕に巻かれた時計を見て何も言わずに走り去っていく。
その姿を後ろから見届ける三人、代表するかのように紅玉が口を開く
「大丈夫かしらぁ?」
「大丈夫なんじゃない?どっかの誰かさんとは違って真面目に働いてるし!……ねえ、明兄?」
紅明は紅覇の言葉にフイッと視線を逸らす。彼は所謂ニートという奴で大学卒業後から二年、バイトもすることなく家で自宅警備に勤しんでいた
苦い顔をしている紅明に紅覇は更に糾弾を続ける
「ねえねえ!仕事しないの?いい加減にバイトくらいはやったほうがいいんじゃないかなあ?紅玉や僕だってバイトくらいはするのに、明兄は何にもしないの?ねえ、明兄!」
「……、」
何も言わなかった紅明だったが、紅覇の球団に心が折れてしまったのか、紅覇と紅玉に背を向けて勢いよく走りだした。要は逃げた、
紅玉は呆れた目で紅覇を見るも、紅覇は恍惚といった表情を浮かべており何も言えなかった
「あは…っ!さいこーだねっ!」
「紅覇兄さんは大学の方、大丈夫なのぉ?」
「大丈夫大丈夫、まぁそろそろ行くよ。じゃね、紅玉!」
ひらひらと軽く手を振って大学へ向かう兄を呆れ半分で見送る紅玉
三人とも帰ってしまい、一人になった紅玉は我ながら気持ち悪いわね、と一言呟いた
白瑛から電話を貰った直後に、紅玉は三人の兄達に一通のメールを送信した
【白龍を虐めている男が居るみたいよ、場所は大体特定してるわぁ。今からシめに行くから来れる人は高校の校門前ね】
ニートの紅明や大学生の紅覇辺りは来るとは思っていたけど、仕事を投げて紅炎まで来るのは想定外の想定内だった。
私達は結局の所、白瑛と白龍が大切なのだ。二人からは避けられていても、私達は好きなのだから仕方が無い。
だから、
「二人に手ぇ出そうなんて、許さないっつの。」
道端に転がっている男に侮蔑の視線を送って、紅玉もまたその場を去って行った
真実は白で塗りつぶす
そうすれば、あの二人は気付かないでしょう?
***
長かった…!
原作の方では仲が悪そうなので仲良くさせたかったんです、溺愛させたかったんです。
これで一応終わりです
あとは同じ世界観でいろいろとやらかす予定です、予定で終わればいいのですが←
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