「――っ。着い、た!」
久しぶりに全力で走ったせいか呼吸が上手く出来ない。
時計を見れば走り始めて七分で着いていた。三分も早く走れるなんて、やれば出来るもんだなと実感して公園に踏みいれた
入口から一見すれば何もない、情報はデマだったかと思った所で丁度入口からは視覚となっている砂場付近で怒声らしき声が聞こえた
「いい加減にしろよ!うっせーんだよ、てめぇ!」
「――っ、」
明らかに人が居るのは確実だった
私は音を立てない様に公園の中に入り、中に居る人達にバレないように砂場まで近づく。
砂場前にあるトイレが上手く壁を作っていた
近づけば近づくほどに会話の内容は聞き取りやすくなっていく
「――くんさあ…。いい加減に――してくれよ」
「――――。」
「そんなに――てえの?」
「――――。」
「うっせー…、もう――」
チンピラらしき男の声は聞こえてくるのに白龍と思える声は聞こえない。
もう諦めて違う所に行こうかと考えるが、ここで急に場の雰囲気が変わった。
ガン、という鈍い音が響き渡ったのだ。まるで、力一杯に頭を殴ったような音。
そして同時に聞こえて来た呻くような声
「――っう、痛いじゃないですか」
聞き間違えるはずもない、私の大切な――
「白龍っ!!」
考える間もなく体が動いた
聞き慣れた愛しい弟の声が聞こえて来たのだ
叫び、勢い良く視覚から彼らの前に飛び出せば驚きを隠せていない男たちと、口の端から血を流す弟の姿があった
「…姉さん!?どうして…」
「説明は後。――うちの弟を随分可愛がってくれたみたいですね、」
白龍を後ろに隠して、男たちに冷たく言い放つ
男たちは私の顔をじろじろと見てから、私が白龍の姉だと認知した途端に顔を青くし始めた
「やっべえよ、どーすんだ!おいっ」
「そもそも!こんなことしようっつったの、てめーだろ!」
男たちは勝手に仲間割れを始めてしまう
意味が分からばない私は唖然とし、理由を知っているであろう白龍は冷めた視線を送っていた。
男たちは仲間割れの末に「すんませんしたー!」と気味の悪い笑みを浮かべて逃げるように消えた
「…どういう、」
「あの人達は三年で、姉さんの事が好きらしいです」
白龍が言った言葉に私は首を傾げた
後ろに隠した白龍と向かい合えば、気まずそうに視線を逸らす白龍
このまま互いに黙っておくのも時間の無駄なので、ポケットからハンカチを取り出し白龍の傷口に当てる
「いっ…、」
「まずは消毒です、それから話をしましょう?」
ね?と念を押すように言えば、白龍は観念した様子で首を縦に振った
***
「話をしてくれますね?白龍、」
ハンカチは水道で濡らして傷口に当てて、公園の中のベンチに二人並んで座る
白龍は私の問い掛けに、深い溜息を落としてから口を開いた
「姉さんが卒業して、俺が二年になって二週間くらいのことです。
先輩に呼び出しされて、頼まれたんです
『白瑛さんと俺の間を取り持って欲しい』って、勿論断りました
そういうのは前々から数回あったんですがすべて断ってたんです
それで、今月に入ってすぐに柄の悪いと評判の先輩三人に呼び出されました
指定された場所に行けば、やはり同じような頼み事で断ったんです
…が、彼らは本当にしつこく俺に頼んできて――、俺も苛々して先輩達に言ったんです
『お前たちみたいなゴミに姉さんは渡さない』って、
そしたら先輩を怒らせて意固地にさせてしまったようで…、
毎日、家を出てすぐの道で俺を待ち伏せするようになったんです
まあ、後は…さっき姉さんが見たように此処に連れて来られて、撮り持つように頼まれて断れば殴られる。――こんなもんです」
どうですか?とあっけらかんに言う白龍に私は言葉を失った
今月に入って、と白龍は言った。今日は五月三十日、約一ヶ月だ。
一ヶ月も白龍は理不尽な暴力を受けていた、なんて
「どうして引き受けなかったんですか、」
「それは…。」
「私が、いくら貴方に取り持って貰っても…あんな奴等と付き合うように思えますか?」
答えは言うまでも泣くノーだ。
あんな男たちと付き合うなんて論外だし、その程度の事は白龍だって分かっているはず
なら、どうして?
私が思考に陥っていると、唐突に白龍は肩を震わせた
「だって…、だって!絶対に姉さんが付き合わない保証なんて無いじゃないですかぁ〜っ!」
「…え!?は、白龍?」
「万が一にも姉さんが…っ、あんな奴を好きになったら…俺っ、」
ぼろぼろと大粒の涙を流して喋る白龍に何も言えない私
嗚咽を漏らして泣き続ける白龍の声だけが誰も居ない公園に響き渡る
「……。」
「っく、…ぅ、」
どれくらいの時間が立ったのか見当もつかないが、一頻り泣いたら白龍は静かになった
ちらりと横に座っている白龍を盗み見れば、顔を赤くして俯いていた
「あの…、姉さん…。」
遠慮気味に話しかけてくる白龍に、私は白龍の方を向く事で返事をした。
白龍は視線を泳がせつつ、話を始めた
「俺は、その、姉さんには絶対に幸せになって欲しくて、」
「…、」
「姉さんには…、姉さんが一番愛した人と付き合って欲しいんです。――だから、」
その先の言葉は白龍が言うまでもなく分かった。
きっと彼は財産目当てで再婚した母の事を言っているんだろう。
白龍にとっては母とは、反面教師なのかもしれない
「大丈夫ですよ。私はちゃんと幸せにしてくれる人を見つけます」
だから、今度からは無茶な真似はしないでくださいね?と白龍にくぎを刺せば、白龍は苦笑いを浮かべて、はい。と返事をした
と、ふと私は此処に来た最初の理由を思い出し、鞄の中から礼の物を取り出した。
ついでに自分のも取り出して一言
「弁当、忘れていましたよ?今日は此処で一緒に食べませんか?」
白龍は、忘れ物を受け取った
強がったふりのおとこのこ
***
無駄に長くなりました、練兄妹の話です。
この学パロはアレです、いろいろとキャラ崩壊しちゃってる気がします
紅玉→→→→白瑛→→→白龍
紅玉さんが白瑛ちゃんに矢印を飛ばし過ぎな話です、なんだこれは。
ついでに、この後おまけあります。
練兄妹勢ぞろいです、そしてキャラ崩壊が…
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