キミに近い場所に | ナノ




魯迅の『故郷』という作品を読んで萌え滾った結果です

内容は
主人公は20年ぶりに故郷に帰ってくる。かつて地主であったが、今は没落してしまった生家の家財を引き払うためであった。主人公の想い出の中で美しかった故郷はすっかり色あせていた。主人公は、少年時代に仲良く遊んでいた小作人の息子・閏土(ルントウ)との再会を楽しみにしていたが、再会した閏土との口から出た言葉は、地主階級と小作人という悲しい身分の壁を否応無く突きつけるものであった。

wikiより転載。
途中から原作様を完全に無視していますが、それでもよろしければ


−−−



要らない物は売ってしまおうと母の考えによってアリババは家の物を物色していた。どれが、どのくらいで売れるのかと考えていた所で思いもよらぬ闖入者がやってきた。
 
アリババはまた盗みを働きに来た者かと思い、やや警戒しつつ部屋へと入ってきた人物を見てみると、そこに居たのは見覚えのある男だった。

アリババは、はっきりと残っている記憶で彼の名前を呟く。


「…カシム、」


少年時代の記憶を手繰り寄せるまでもなくアリババは彼の事を覚えていた。変に媚びて来る周りの中でカシムだけは普通に接してくれていた、そんな事が嬉しかったのがアリババの記憶には強く残っていた

しかしカシムはアリババの記憶を打ち壊すように固まった顔で言う


「旦那様…。」
「……え、なんでっ。――なんで、そんな言葉使いするんだよ!」


柄にも無く声を荒げるアリババだったが、カシムは表情を一切変えないままに言った


「滅相もないです、あの頃の私は幼く弁えもなく――」


悪魔でも他人行儀な話し方を続けるカシムにアリババは何も言えなかった
身分の差があると言う事は痛いほどに知っていた、が…彼だけは違うと思っていた。

彼なら…、カシムなら変わらないで居てくれると思っていたのに――…。

アリババは悔しさで唇を噛みしめる


「――っ、」


痛々しいほどに作られたカシムの顔はアリババが見るに堪えないものだった

数分の沈黙が場を制し、カシムは懐から取り出した煙草をふかし始める。
独特の匂いが鼻腔を刺激する

アリババは、すぅっと一息吸いこんでカシムを見た


「――お前も、うちの物を取りに来たんだろ?…好きなものを持って行ってくれ、お前になら何だって渡すさ」

「…有難う御座います」


そう言って微笑んだカシムの顔は、やはり冷たく作られた笑顔だった。
物を吟味し始めたカシムにアリババは何も言えず立ちつくしていた。

昔の懐かしい記憶が頭の中で、ぐるぐると周り続ける
何も知らなかった俺達、ただただ…楽しかったあの頃の二人。


「有難う御座います、旦那様」


カシムの声で現実へと引き戻されるアリババ
アリババはカシムとこのまま別れてしまう事だけは避けたく苦し紛れに叫んだ


「――カシムっ!」

「…どうされましたか?―旦那様、」

「ここにある物を全て渡したって良い!だから…っ、だから――っ!」


一旦言葉を区切り、勿体付けるわけでもなく作った笑みを浮かべたままのカシムを見据えて告げる


「昔みたいに…戻ってくれよっ、カシム!」


アリババの心からの言葉を感じとったのか、カシムは浮かべていた笑みを消した。
アリババは涙が溢れて来る瞳を必死で拭いつつ、カシムの目を見据える

重たい沈黙
一秒が何年もの時に思えるような時間だった

アリババが肩を震わせながらカシムを見つめ続ければ、カシムは今までの冷たい態度を軟化させて溜息をついた


「はぁ…。じゃあ、あと一つだけ欲しい物があります」

「――なんだよ?」


何でも言ってくれ。とアリババが付け加えるように言えば、カシムはアリババの頬に手を添えて、そのままアリババの唇と自らの唇を重ね合わせた


「――っ!?」


驚きのあまりカシムを引き離すことさえ出来ないアリババ
カシムはアリババの腰を抱き寄せて、自分の存在を刻みつけるかのように強く口付ける

カチリ、カチリと時計の秒針の音が嫌味な程に聞こえてくる
針が一周回ったのか、ガチリと音を立てて長身が音を立てたのと同時に唇を解放される


「……っ、」


熱い顔でカシムを見てみれば、カシムは不敵に――悲しげに笑って見せた。


「じゃあな、アリババ」

くるりと背を向け出て行くカシムにアリババは何も言う事が出来なかった




キミに近い場所に
行けたら、いいのにな。


***



身分の差がある恋って好きです、大抵は悲恋か純愛のニ択ですよね



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