「おはよう、アリババくん。昨日は熱だったらしいけど…大丈夫かい?」
「おー、アラジン。心配さんきゅー!もう大丈夫だぜ!」
翌日、学校に行けば相変わらず年齢不詳な同級生のアラジンと校門で会った。そのまま二人で並んで歩くが、一歩踏み出すたびに激痛が腰に走る。原因は痛いほど分かっているけど認めたくない
アリババの様子に異変がある事に気付いたアラジンは心配そうにアリババを覗きこむ
「…どうかしたのかい?」
「え、えっとー…、まだ体が本調子じゃないって言うか…その、まぁ…。」
「…ふぅん、」
意味深に頷くアラジンに、アリババは笑顔を壊さない様に対応する。今、この瞬間、自分の大根役者ぶりが憎くてたまらない、と心の中で叫ぶ
昨日の事をアラジンに知られたら心底軽蔑されそうで、大根とは分かっていつつも平気なフリして演技を続けるアリババ。しかし、アラジンは薄く笑みを浮かべ――
「ねぇ、アリババくん」
ギクッ、と体が跳ねそうになるのを必死で隠して普段の笑みで「どうした?」と返答する
「昨日、黒のお兄さんがね、アリババくんが休みだって聞いて直ぐに学校出て行ったんだけど…アリババくん、知ってる?」
「し、知らないなあ!」
「そう、ところでアリババくん――、首のソレはどこでつけたんだい?」
首?思いもよらぬアラジンの問い掛けに、携帯の反射部分で確認する。鏡なんて持ってないしな!
角度を調整して見てみれば、赤い痕…っていうかキスマークがくっきりとついてあった
「――っ!?」
「ねえ、アリババくん。もう一度だけ聞くけど…ソレはドコでつけたんだい?」
「あー、えーっと…」
やべえ、詰んだ。
完全に終わった、しどろもどろになりつつ頭を回すものの良い考えなんて一切出てこない。もうこうなったら、いっそのこと全て明かそうかという思考に辿り着いたところで手の内にある携帯が震えた
「あ、電話だ!わりぃ、外すわ!先に教室行っててくれ!」
「あ、アリババくん!…逃げられたかっ」
なんかアラジンの黒い発言が聞こえた気がしたけど、きっと気のせいだと信じたい。
痛む腰を酷使して裏庭まで走り携帯を開けば、電話では無くメールが届いていた。差出人は…ジュダル。
嫌な予感がする
見なかった事にしようと思い、メールを開かずに携帯を閉じれば再度ぶるぶると携帯が震えた
「……、」
かちり、と携帯を開けば今度こそ電話だった。ディスプレイには通話中の文字…しまった!俺の携帯って、開いたら通話になるんだった!やべぇ、死んだ!
恐る恐る耳元に携帯を持って行き、もしもし?と言えば彼の声が響いてくる
「メール無視するとは、いい度胸してんじゃねえか」
「いや無視したわけじゃなくて…、まぁ、どうかしたの?ジュダルは」
「熱出た、看病しろ」
「―――、はぁ?」
なんだよそれ、俺今から学校が!と反論する前に一方的に切られる。リダイヤルするも既に電源は入っておらず…、強制イベントみたいだ。どうしてこう人の話を聞かないんだろう
このままジュダルを無視して教室に行くのも手だとは分かっているが、昨日ジュダルに看病(っていえるのか不明だけど)してもらったし、キスマークの事を聞きそびれた。
それに、自分はしてもらって相手に何もしないのは…こう。なんかむずむずして気持ちが悪いから嫌なんだ
「…はぁ、行くか――」
深いため息を一つ落として、今しがた来た校門へと足を運んだ
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