それでも君が | ナノ



白い涯×病み集


――



体は軋むように痛い
なのに、怖いとは思えない

足に繋がれた鉄球が動きを封じ
後ろで縛られた腕には力が入らなかった


場所さえ分からない所で一人の男の声が響く


「元気か、集」


楽しそうに笑いながら言い僕の顎に手を添え持ちあげ目を合わせる形になる


彼は、違う
彼は、僕の知ってる彼じゃない


「聞きあきたよ…、涯」
「質問に答えろよ、元気か?」
「元気に見えるの?」
「見えないな」


同じ顔、同じ声で言う
決定的に違うのは色だけ
白く輝く銀色は酷く残酷に言う

彼は、実に愉しげに言う


「そうか…、じゃあ元気をやろう」
「…っ!……要らないよ」


決まって繰り返される会話
同じことの繰り返しをする僕達


彼は耳元に顔を寄せ囁く
―――悪魔の囁きの如く囁く



「好きだ、集」
「っ…!」

「一緒に居てくれ、集」
「やだっ…、言うな…!」


「愛してる、集」
「うわぁあああああああああ!」




泣く、叫ぶ、泣く、叫ぶ、泣く
閉ざしていた心が無理矢理開かれて泣き叫ぶ
目の前の彼は僕のそんな姿を見て楽しそうに笑う


僕の愛しい人、涯


コバルト色に輝く髪に
甘く溺れるような声で囁く、涯

涯は―――…



「違うっ!君は涯じゃ…」
「俺も涯だ。嘘じゃないさ」
「ちがっ…!」
「俺を信じれないのか、集」



惑わされる、目の前の彼に


彼は、言う
涯と同じ声で囁くのだ

僕を惑わすために囁くのだ



白く輝くひとみは射ぬく様に僕を見つめる、観察する様に見る




そして、言う


「忘れるな、これがお前の罪だ」
「…」



「お前が、俺を壊した。」


「お前が大嫌いだ、集」




それだけ言って立ち去る彼をうつろな目で見つめる

彼は僕を惑わせ狂わせ、そして傷つける


そんな繰り返しなのに




「それでも、涯が好きなんだ」


僕も、彼も、壊れていた




(彼の面影を残してるから)
(僕は君を、利用するんだ)


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