職員室盗聴 | ナノ



視点/ディムルッド

---

「そろそろ敵の情報が欲しい所なんだよな」

「そろそろと言っても、まだ準備始まって二日目ですけどね」


俺の呟きに容赦のないツッコミが隣の席のアルトリアから飛んでくる。俺は溜息を一つ落として、もう一度アルトリアに向けて今の気持ちをアルトリアにぶつけてみる。


「だから、俺が言いたいことはだな…」

「その話は聞かないといけませんかね?」

「A組のケイネス先生の情報が欲しいんだ!!」

「それもう文化祭とか一切関係ありませんよね?」

「あぁ、まったくないな」

「死ね」


どこからか取りだされた30センチさしでアルトリアに頭を殴られる。――流石剣道部の元主将の女…防具も付けていない俺は意識が飛ぶところだった。凄く痛いんだが

しかし実の所、A組に限らず全てのクラスの情報は欲しい。俺達のクラスがホストクラブという際どい色ものの出し物なので、周りのクラスの情報は凄く…そりゃあ凄く欲しい

それはアルトリアも同じようで、30センチさしを片づけて溜息をついていた


「どうしたものか――…」


思わずもれる一人ごと。元より返事など期待していなかったのだが、予想外の方向から声が飛んでくる。


「話は聞かせて貰ったぞ!」

「――何用だ、ギルガメッシュ。こっち来んな」


唐突に目の前に現れたのはギルガメッシュだった。アルトリアは瞬間的に顔を顰めて、警戒心をむき出しにしていた。

ギルガメッシュはアルトリアの前の席であるウェイバーの席を勝手に撮って、此方を向いて座る。…後でウェイバーに怒られても知らないからな。


「敵クラスの情報が欲しいのであろう?」

「まあ…な。」

「そんな貴様らにコレをやろう」


ギルガメッシュがズボンのポケットから取り出したのは黒いミュージックプレイヤーにも見える物体だった。俺とアルトリアは、この物体がなんなのか不安に思いつつ触れてみる。

触れてみる…が、何も起きない。ギルガメッシュに今にもキレて掴みかかりそうなアルトリアの前に違う声が響く


「そこの赤いボタンを押せば分かるはずだ」

「いつから居た、言峰っ!」


思わず声を上げて驚く俺。コイツ何者だよ…、と俺が真剣に考え始めたところでアルトリアが少しためらいつつも赤いボタンを押す。




『衛宮先生、F組が騒がしいせいで私のクラスが授業に集中できないのだが?』

『そうですか、A組の生徒は集中力が足りないんですね。A組のわりに、その程度ですか』



「「…………。」」


思わず黙りこくってしまう俺とアルトリア。ギルガメッシュと言峰は普段通りの厭らしい笑みを浮かべている。

聞こえて来たのは俺が聞き間違えるわけもないケイネス先生と、今この場に居ない衛宮先生の声だった。この時間は二人とも職員室に居るはずだ、つまり――

俺とアルトリアは同じ思考を辿り、同じ結論を導き出したのか同じタイミングで悩んでいた顔を上げた。ゴクリ、と息を飲んで俺が代表して告げる


「お前等…職員室に何をした」

「何…、先生に少し盗聴器を付けておいただけだ。」

「何やってんですか!言峰、流石にやり過ぎですよ!?」

「…アルトリアよ、我達のクラスが勝つためだ。それに――」


勝つためだからって何をしても良いのか、と言おうとしているアルトリアにギルガメッシュ制す。ギルガメッシュはにたにたと笑いつつアルトリアが盗聴に賛成するような事を告げた


「それに、文化祭の売上が一番良かったクラスは褒美があるらしいぞ」

「ほ、褒美!?な…何が――」

「それは我にも知らん、だが――この学園の褒美だぞ?」


零学園、此処は県内でも有名な私立高だったりする。それなりに入学金も高いし、月謝も高い。そんな学園の褒美――、凄く気になる。

俺が悩んでいると、隣のアルトリアは数分前の自分の発言を取り消すかのように堂々と俺達に言い放った


「じゃあ皆で聞きましょうか、職員室の内容」

「アルトリア!?おまえ、さっきまでと言ってる事が――」

「…私は最初から聞こうと思ってましたけど?」


駄目だこいつ!俺がそう口に出せば、アルトリアは知らん顔していた。ギルガメッシュと言峰は嫌な笑みを浮かべている。俺は悩みつつ、ケイネス先生の職員室での姿も聞けるので良いかと考え盗聴器に耳をすませた


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -