見たくなかった。 信じたくなかった。 見えない振りをしたかった。 拒絶したかった。 現実から目を逸らした。 ―――行くんじゃなかった。 「おい、何をやっている?集!」 葬儀社より緊急収集がかかったと言うのに僕は無視をしていると家に涯が直接来た。 しかし僕は聞こえない振りをして布団に潜り込む。 しかし布団は涯の手によって無理矢理取られた 「命令だ。今すぐ来い。任務だ」 「…嫌だ、行かない」 「集!何を言ってるんだ!」 「うるさい!僕は行かないって言ってるだろ!?」 「…いい加減にしろ!集!」 そう言って涯は僕の手を乱暴に掴み無理矢理立ち上がらせる。 暗闇なので何も見えず少し安堵する。 僕が見えてないなら涯も見えてないだろう。 今の僕の顔は酷い状態で涯には見られたくなかった。 僕は平常を保って声を出す。 「僕は行かない。早く帰ってよ」 「そんな我儘は聞かない」 「早く出て行けよ!涯!」 「時間はもう無い。早くしろ、集」 「行くもんか!僕に命令しないでくれ!」 口調が荒くなるけど自制が出来ず、涯に掴まれている腕を振り払いキツく睨み呟いた 「…嘘吐き」 「ハッキリ言えよ。聞こえない」 「お前なんて信じない!嘘吐き!」 「いい加減にしろよ集!いつまでも我儘を言うな!」 「いい加減にするのは涯の方じゃないか!?ふざけるな!」 「何がだ!言ってみろよ!」 暗闇に目が慣れてきて涯の顔が見える。 苦虫を噛み殺したような顔が見える――そして僕は今の想い全部ぶちまけた。 「見たんだ!今日の放課後に涯が女の人とキスしてるの!僕はこの目でちゃんと見たんだ!もう涯なんてっ…涯なんて、信じれないよ…ばか」 そう言ったらまた涙が溢れて来てぼろぼろと流れ始める。 先程と同じように止めようとすると溢れてさらに顔がぐちゃぐちゃになり恥ずかしくてその場にしゃがみこんで泣く。 すると頭上から涯の声が聞こえてくる 「集…聞いてくれ」 「嫌だ!聞きたくない!」 「聞いてくれ、」 「聞きたくないって言ってるだろ!嫌だ!聞かない!」 別れを告げられるのかと思い頑なに涯を拒絶していると涯がしゃがんで耳元で囁いてくる 「集…ごめんな」 「なんで…謝るの?」 「俺が悪かった、ごめん」 「認めるんだ?全部。」 「あぁ、嘘は吐かない」 「僕を…僕を、捨てるの?」 顔をあげて尋ねる。 涯と別れるのは嫌だ。一緒に居たい。 涯が好きだから一緒に居たい…!そう言いたかったのに声にならなかった 「集…」 「捨てないで…涯っ!」 「捨てれるわけ…ないだろうが」 ぎゅっと涯に包まれて涯の体温が直に伝わってきた。 その暖かさに涙がまた溢れてくる 「涯っ…涯っ!」 「…あれはキスすれば諦めると言われたんだ。ごめんな?集」 「次は許さないから」 そう言って目の前の涯に触れるだけのキスを落とされて僕はベットに押し倒される。 もっともっと、涯を感じたくて、僕は涯に全てをゆだねた 拒絶できないのは (君が好き過ぎるから) (他の奴とキスなんてしないで) Back |