数分後 チンチラ達は負け犬の定番の台詞である 「お…、覚えてろ!」 と、歯が折れていたのか回らない呂律のまま叫んで消えて言った。私には関係のないことだが 今の状況から見る限り、高校時代に部活の助っ人として合気道部に入っていてよかったと本当に思った。 「……。」 「あ…、大丈夫ですか?」 「あぁ…、」 一人感傷に浸っていれば痛いほどに視線を感じた 今の状況を客観的に見れば、私が彼を助けた…という所だろうか? 男は冷めた目で黙っている そういえば、彼は徹頭徹尾だんまりだった。もしかして私の行為が迷惑だったのかと思い頭を下げようとすれば、先程とは打って変わって柔らかい声が響いた 「――ありがとう、君のおかげで助かったよ」 「…え?」 予想外の言葉を投げかけられ思考回路が止まる。彼の顔を見れば、柔らかく微笑んでいた 柔らかい笑みに胸が締まる、綺麗な笑みだ。 いつまでも見ていたい笑顔を眺めていたが、時間が時間なのでこの場所を引き上げる 「…では、私はこれで」 気を付けてくださいね。と一言付け加えて彼に背を向ければ、後ろから声が飛んでくる 「ちょっと待って」 何事だろうと思いつつ振り返ってみれば、続けて言葉を重ねられた 「良かったら礼をさせてくれないかい?」 ← / → Back |