熱い君に | ナノ




『風邪をひいた。アクエリ買ってきてくれ』



短く用件だけ書いて送られてきたメール
送信者は我等のリーダーの涯だった。僕は急いで近所のコンビニでアクエリを買って涯の家に向かって走った。


「お邪魔するよー?」


全速力で走り普段は使わない合鍵を使い家の中に入ったものの返事はなく心配になり廊下を音をたてないように駆け足で通り抜け涯が居るであろう寝室に向かうと予想通り涯はベットで眠っていた


「大丈夫なのっ!?涯っ!」
「…叫ぶな。頭に響く」
「…いつもの涯だ!良かった!」
「アクエリを寄こせ」


言い方に若干ムカついたけど今の涯は見ていて本当に辛そうなので何も言わずアクエリを涯に渡すと蓋を開け一気に飲み干した。よほど喉が渇いていたのが分かる。飲みほしてから彼にしては珍しく柔和な笑みを浮かべて言った


「んっ…助かった」
「他にして欲しいことない?」
「今は特にない。帰って良いぞ」
「なんだと…心配してんのに…。」


帰れと言われて帰るのはなぜか癪なので、いつもの仏頂面ではなく辛そうにしている涯に心くすぐられ涯の布団の中に入ってみると、当然だが驚いた様子で涯は怒鳴った


「風邪がうつるから出ろ!」
「涯の近くに居たいの!」
「風邪ひきたいのか…馬鹿!」
「今日の涯は暖かいね、いつも冷たいのに」


そう言ってペタペタと涯の体に触れる。顔や首、引き締まった腰と触れてみるとやっぱり熱かった。涯に触れることに夢中になっていると涯が神妙な顔になる。それに気付いた時には僕はベットに押し倒された


「な、何すんだよ!」
「お前…っ、誘ってるだろ?」
「誘ってない!熱なら寝とけばいいだろっ!?なんでだよ!」
「お前が…、お前が煽るのが悪い」


煽ってない!と言おうととすると涯の唇により口を塞がれて声にならない。何度も何度も角度を変えてキスをするうちに酸素が恋しくなり口を開けると、にゅるりと涯の舌が入ってくる。いつもより熱を持つ涯の舌にぐちゃぐちゃにされて頭の中が溶けてしまいそうになる


僕がキスに夢中になると涯の手は服の中に入って来て僕に触れる。触れられた所がじわじわと熱を持って行くのが分かった。――そこで口が解放される。解放されても長いキスの余韻により喋れなかったが、徐々に頭が回り始めた所で涯がいつもの不敵な笑みを浮かべつつ辛そうな顔で言う


「お前の体…冷たくて気持ちいいな」
「っ…!//涯が、熱いんだろっ!?」
「そういえば…熱の取り方で人に熱をうつす…、という方法があったな」
「え…?冗談だよね?涯?」
「冗談に思えるなら思えばいいさ」
「〜っ!この変態っ!//」


小さく反撃してみるが涯はフッと笑って流す。…ムカつくけど諦めた。この状態の涯は何を言っても無駄だと言う事くらいは重々理解している。伊達に付き合ってない。僕が覚悟を決めた所で涯は思いついたように笑いながら言う



「そうだ…!お前が熱出したら俺が看病してやるよ。付きっきりでシてやるから楽しみにしとけ」



「絶対に嫌だ」



そして、僕は涯の熱を貰う事になった









後日



「…熱出た」
「しゅう?だいじょうぶ?」
「大丈夫だよ、ありがとう、いのり」


いのりに看病して貰いつつ家のベットで寝ていると玄関のチャイムがなり、いのりが応答する。いのりは玄関で訪ねて来た人と話しこんでいるようで中々此処に戻って来ないので「いのりー?」とベットから起き上がらずに玄関のいのりを呼ぶと、明らかにいのりでは無い声が帰って来た


「よぉ、看病してやるよ。集」
「はぁ!?なんで涯が居るんだよ!?」
「もう覚えてないのか…?俺が看病してやるって言っただろう?」
「…。そういえば…!」


昨日、あの後は涯に付き合わされて疲れ切っており記憶がもうろうとしていて思い出せないが、確かにそんなことを言われた気がする。…ていうか言われたのを思い出した。――と、思い出した所で一気に顔が熱くなるのが分かった。だって、つまり、僕はこれから――…。


「…いやいや!気持ちだけで十分だから!」
「今から俺が看病してやるよ」
「それに…、いのり居るし!」
「いのりなら任務で葬儀社にいる」
「え…いや、でもっ…!」



「有り難く受け取れよ?集」



そう言ってベットの上の僕に馬乗りになる涯。これはもう回避不可能みたいで仕方ないから諦めよう。薄い笑みを浮かべた涯は心底楽しそうで、いつもより冷たくて気持ちよく感じた。いや今日は僕が熱いだけなんだろうけど


熱が涯にうつることを願って






(いつもの冷たい君も好きです)




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