プロローグと言う名の顔見せ | ナノ






「さっさと席につけ馬鹿共」

 担任の衛宮切嗣の声が普段にも増して凄味を怯えていた。
 それもそのはず、今日のHRの議題は私たちの担任が最も嫌いそうな議題だったからだ

 切嗣が苛々しているのと反比例して私たち生徒は浮足立って切嗣の次の言葉を待った
 ふぅーと息を大きく吐き出し切嗣の声が響き渡る

「糞めんどくさいが今から零学園の学園祭について話を―」
『いえええええい!!!!』
「…話聞け馬鹿、特に一番はしゃいでるアルトリア五月蠅い」
「は?はしゃいでませんが!イエーイ!」

 まったく私がはしゃいでいるなんて失礼なことを言いますね、この担任
 皆でわいわいと騒ぎまくり、隣のクラスのケイネスが来て五月蠅いと怒鳴る。

「チッ…。ケイネスの奴…うっせーな…。」
「先生!先生でもケイネス先生の悪口は許しません!」

 席を立ちあがって講義を始める隣の席のイケメン代表のディルムッド
 相変わらずのケイネス廃だ

「あー、それじゃあ…」
「センセーセンセーセンセー!」
「何回も呼ぶな!一回でいいといつも言ってるだろ間桐!」

 ハイハイ!と手を上げて発言しようとするのは元気過ぎて困る間桐雁夜
 私の三つ前の席でわいわいと言葉を紡ぎ始める

「あのさー!俺思うんだけど!」
「分かったから黙れ」
「俺の話聞けよ!」
「少し黙れ、頼むから」
「えー、センセーっ…」
「雁夜、落ち付いてください」

 わいわいと騒ぐ雁夜のストッパー役であるランスロットが口を開いた
 ランスは私の二つ前で雁夜の後ろの席を陣取っている
 …不思議な事にランスは毎回必ず雁夜の後ろの席をゲットしている

「ランスがそう言うなら…」

 雁夜もランスには頭が上がらないようで大人しく座る
 ランスは普段と変わらない笑みのままだが、どこか楽しそうだった…ランス…。

 今度こそ話が出来る、とでも言いたいように切嗣が口を開こうとしたところで
 またしても切嗣じゃない声が響き渡った

「先生」
「…げっ、なんだ言峰」
「まだ号令をしてませんが」
「……号令くらい別に」

 切嗣が一番嫌がる事をピンポイントでする言峰綺礼
 ランスの左隣の席で立ちあがったまま切嗣に視線を送り続ける

「……コイツ。」
「何か言いましたか?先生?」

 号令をするのがめんどくさいとでも言うように視線を泳がせる切嗣を見て
 言峰はニタりと笑っていた。相変わらず切嗣で遊んでいるようだ抜かりない

「…金ピカ号令だ」
「遅い!遅いぞ雑種!この我の号令を忘れるとは何たる所業だ!」
「…これだから嫌だったんだよ」 

 あああああああ…とどんどん心が折れていく担任の姿を楽しそうに見つける二人
 金ピカと呼ばれた男はギルガメッシュ、言峰と日頃から嫌がらせの為に全力を尽くしている
 席は言峰の後ろなので、よく授業中も一緒に遊んでいる事が多い

「ギル達もよくやるよな…」
「あの二人の感性は俺には分かんねえ…わかんねえよ!」

 言峰たちを横目で見つめるのは、ギルの右隣のウェイバーとウェイバーの隣の龍之介
 ウェイバーは見た目は可愛いのだが言葉使いが荒い
 龍之介は叫ぶことが多い、本当によく叫んでいると思う

「気をつけー、綺礼!」
『よろしくお願いします』

 ギルの声が響き渡る
 綺礼と聞こえたのはきっと気のせいだろう、切嗣も無視している

 

 私たちは期待に胸をドキドキしながら切嗣の次の言葉を待った



「あー、それでは――」