変わらない私と | ナノ




(※)学パロ


 あぁ、またやってしまった……。



「この女…!喧嘩売ってんのか?」
「私は喧嘩など売った覚えはありませんが」
「んだと、てめぇ!」
「早く帰らせていただけませんかね」
「状況良く見てから言えや」
「……ふぅ。」


 また切嗣とアイリから叱られてしまうかな…。私は間違った事をしたとは思っていないけど、今の状況を客観的に見て考えると、私の今しがた起こした行動は褒められたものでは無かった。

 群がる素行の悪い方々。私が今見渡せる範囲内でも、二十人くらいは居る気がする。仕方ないと自分の中で割り切って、部活用の鞄の中から竹刀を取り出し一言




「貴様ら…謝るなら今のうちだ。今ならまだ見逃してやる」


 返事、無し。
 ならば仕方ない。

 
 遠慮せずに行かせて貰おうではないか。















「ごっ、ごめ…!」
「今更ですね」
「本当、すんませんっした!!」


 先程まで私に煩く怒鳴り散らしてきていた男は全員動かなくなっていた。最も気絶しているだけなので死んではいないし殺してない。多分全治2週間くらいの骨折くらいだ多分。

 目の前の男が、みっともなく泣きながら土下座している。そんな相手を前にして私は、普段とは打って変わった汚い笑みを浮かべて言った


「…気持ち悪い」


 消えろ、と一言だけ吐き捨てて竹刀を大きく振りかぶった。帰ったら竹刀の手当てをしないとな…等と呑気な事も考えつつ、相手の男に最後の一振りを浴びせようと、腕を振り落とそうと――


「もう止めておけ」
「……!?」


 ――したところで、竹刀を後ろから取られた。竹刀は握りしめていたはずなのに、油断なんてしてなかったはずなのに、あっさりと私の腕から竹刀は抜け落ちた。

 惨めに土下座していた男はここぞとばかりに逃げて行った。

 私の剣を取る人間なんて一人しか知らない。私は出来る限りの悪態を付きながら、私の竹刀を取った人物と対面する


「返して下さい」
「竹刀をもっと大切にしろ」
「切嗣には…関係ないです」


 切嗣に取られていた竹刀を奪い返す。奪い返したのは良いけど切嗣が明らかに怒っているのが感じ取れる。何度も怒られてきたのだ、一人で無茶をするな。と

 私はバツが悪いので、地面と睨めっこしたまま黙っていた。しかし沈黙は切嗣によって簡単に壊されてしまった


「何度言わせれば分かるんだ」


 切嗣の滅多に聞けない本気で怒っている声がする。こんなに切嗣が私に対して怒っているのはいつ振りだろう?そんな事が頭の中でぐるぐると回る。

 今思えば切嗣に本気で怒られたのは、随分昔な気がする、確か――。

 懐かしい記憶に浸っていると、切嗣の声により現実に引き戻される。


「アルトリア…、君は女の子なんだよ」
「…分かってます」


 ギリっと歯を噛み締める。何度も何度も言われてきた言葉だった、いつでも私を苦しめるその言葉は私を諭すように投げかけられる。

 あぁ、そうだ
 古い記憶が唐突に蘇ってきた。


「三年ぶり…ですね」
「何がだい?」
「切嗣に本気で怒られたのは、確か…中二の冬が最後です」


 中二の冬、私はギルガメッシュの親衛隊に絡まれた。何かあったら相談しろ、と常日頃から言っていた切嗣に何も言わず親衛隊の呼び出しに応じて、乱闘になった。相手側には柔道部や空手部、レスリング部などの体育会系の部活の部長も大勢居て、酷い怪我をした

 殴られ蹴られが続いて、意識が飛ぶ寸前に切嗣が来て助けて貰った後に、今と同じ様に怒られた。聞いたこと無いくらい低い声でビックリしたのは覚えている。


「君は…、変わってないな」
「そうですか?」
「本当変わってないよ…、昔と一緒で馬鹿なままだ」


 呆れられながら言葉を発せられた。ふぅ、と一息ついてから切嗣は普段通りの声で手を差し出してきた


「ほら、帰るよ」
「…はいっ!」


 差し出された手を取り、倒れている不良たちを無視して歩く。

 あの時も同じだった、怒られた後には必ず優しく手を取ってくれるのだ。



「変わってないのは…、貴方もですよ」


 出来ることならこのまま変わらないままで良いと思えた。馬鹿なままの私で、馬鹿なままの切嗣。ずっとこのままでいいと思いながら、家路に着いた。






***



いろいろ迷走したけど、大人ぶってる切嗣と大人になれないアルトリアちゃんを書きたかったんです。



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