放課後ふと出し忘れていた課題を思い出して(まったく手をつけておらず前の席の涯に答えを教えて貰ったのは秘密)職員室まで走った 一度ノックをしてから扉を開ける 「失礼しま―…」 「少しは反省しろ!聞いてるのか恙神!」 「聞いているだろう、喚くな」 「その口の聞き方はなんだ!」 「お前に関係ないだろう、早く終わらせろよ」 つい数分前に僕が課題の答えを教えて貰った彼によく似た…いや同じと言っても過言ではない顔が僕の位置から見える、もっとも制服の着方や雰囲気、言葉遣いなんかも若干違う そして僕は運が悪い事に職員室内で大声で怒鳴り散らしている先生に課題を渡さなければならない…、最悪だ。 僕は小さく深呼吸をしてから言う 「あの…」 「あぁ!?…なんだ桜満か」 「これ、先週の課題です」 「確かに受け取った」 にこやかに先生に課題を渡すところで僕の目の前とも言える距離から冷たく刺すように痛い視線がじくりと伝わってくる。 視線を送るのは勿論白い方の涯だった。長時間怒鳴られて苛々しているのか、それとも兄の涯と学食を食べれなくて苛々しているのか…、まぁ両方だろう。 僕は突き刺される視線に負け、助け船のつもりで先生に言う 「何かあったんですか?」 「ん?あぁ、コイツが授業サボってまた喧嘩してたんだよ」 「へぇ、でも喧嘩って一人で出来ないし彼だけ責めるのは違いますよね?」 「…しかしコイツは」 「彼は十分反省してますよ先生」 「…行っていいぞ」 心底めんどくさそうに白い方の涯に帰れと合図を送ると、彼は無愛想な顔をさらに無愛想にして職員室から出て行った 「では、失礼します」 一応挨拶をしてから職員室を出る廊下には帰ったと思っていた白い方の涯が先程の無愛想な顔のまま立っていた 「……。」 「やっほー、白い方の涯」 「その呼び方は止めろ」 「じゃあなんて呼べばいいんだよ?」 「知るか、考えろ」 なんて理不尽なんだ…、しかし言い返した所で特に状況は変わらないので歩きながら彼と話す 「何があったの?」 「集に関係ないだろ」 「ケチだなぁ…白い方の涯は」 「だから呼び方を変えろ」 「じゃあなんて呼べば…」 「自分で考えろ」 どうやら呼び方を変えなければ話が先に進みそうにないので僕は真剣に呼び方を考える 「白い…、白い白い…。」 「あまり変なのは許さないからな」 「えー…、白(しろ)は?」 「犬じゃないんだ、断る」 「じゃあ…白(ハク)は?」 「まぁ良い」 「で、何があったの?」 意外にも許可が下りた。ぶっちゃけ僕は白の読み方そんなに知らないから今の断られたら危ないところだった。白は実にめんどくさそうに言う 「別に喧嘩売られたから買っただけだ」 「なんで買うんだよ…」 「……―――。」 「え、どうしたの?」 白にしては珍しく歯切れが悪い。言い悩んでいると言うんだろうか。白は基本的に思ったこと感じたことは言いにくい事でもハッキリと言う(本人に悪気はないはず) だからこそ言い悩んでいるのが不思議に思えて聞き返すと悩んでいるのは性に合わないのか次はハッキリと言う 「集と兄さんに喧嘩を売ると言ってたからだ」 「白…!」 「集は良いとして兄さんに迷惑がかかるのは嫌だからな」 眉一つ動かさずに至極真面目に白は言う。白は自覚があるブラコンなんだよな…、涯は涯で自覚をしっかりと持ったブラコンである…。まぁ昼御飯毎日一緒に食べるなんて仲のいい双子じゃないと出来ないと思う 僕は苦笑いを浮かべて返す 「僕の為じゃないの?」 「違う、自惚れるな」 「そっか…、少し残念」 二人で並んで歩いていると白のクラスの前に着き別れを告げる 「でも、あんまり喧嘩しないでね?」 「分かってる」 「そっか、一応ありがとうね」 「何がだ」 「一応僕も喧嘩売られずに済んだし!ありがとね?」 「…気にするな」 そういって教室の中に入っていく白を見ながら僕も自分の教室に帰る。今日は白って名前を付けたり何気に白に助けて貰ったりと貴重な放課後を過ごせた気がする 珍しく笑顔なキミ …教室に帰る時ダリルに会って敵対心剥き出しで「何があった!?」と心配されたのは気にしないでおく。校内でも有名な不良の白と帰ってくるなんて何があったのかと大勢に心配されたがそれは忘れる Back |