三日目 | ナノ






「掃除は任せたよ」
「おう!二日も集に一人でやらせたから気にせず帰ってくれ!」


 いや僕は別に気にしてないし元より押し付ける気だったんだけど。そんな事を考えつつ八尋を一人残して教室を出て行った。…八尋って本当に、お人好しの馬鹿なんだな。と、やけに腹の黒い事も一緒に考えつつ足早に廊下を進んだ。









 結局昨日は幽霊には会えなかった。僕と涯が一緒に帰ったけど幽霊は出てこなかったんだよね…。

 そして今日の昼休みに涯が堂々と「集いるか?」と教室の扉を開けて入ってきて、僕を拉致ったかと思えば「今日の作戦を伝える、俺の言うとおりに動け」と、有無を言わせぬ口調で命令した。ちなみに、僕に断る権利は無い。

 そんなわけで、今からその涯様による作戦を決行する所。…僕としては、今すぐにでも帰りたいんだけど昨日の涯との約束があるので作戦は決行する。約束は守るタイプなんだ。


 まだ五時とはいえ冬場の五時は何気に暗い。路地裏なんかに行けば、今すぐにでも幽霊に会えそうなほど不気味で――


「やっと見つけたぞ、童顔チビ」
「えぇえええええええ!?」
「何を叫んでいる。つか、一昨日は逃げやがって…」


 早い!早いよ、幽霊さん!僕まだ心の準備が整ってないのに!僕の真後ろに立って、僕を見下す幽霊は、やはり涯と瓜二つの顔だった。――本当に双子だったんだな。なんて、今更ながらに実感する。

 頭の中で涯に言われた言葉をリプレイする。……出来る、僕なら出来る筈だ。僕は幽霊の正面を向いて言葉を放った


「一昨日はごめん」
「なんだ急に気持ち悪い」
「昨日から考えてたんだ…、君に協力しようかって」
「で、どうするつもりだ」
「僕もクリスマスは嫌いだから協力するよ」


 ニコリと笑って言った。涯の作戦とやらは、僕は幽霊の手助けをして幽霊の事について詳しく調べてこい。とのことだった。それって完全に僕が大変な事になるよね?と言ったけど、しっかり働けと一蹴された。俺様過ぎる。

 僕のわざとらしい笑みをみた幽霊は一瞬考えるようなそぶりを見せてから、直ぐに言い放った。


「よし、協力しろ」
「いえっさー」
「先に言っておくが俺の言う事に逆らうな。逆らった場合は呪うぞ」


 あっれ、昨日もこんな脅しを聞いた気がするんだけど。気のせい?いや気のせいじゃないよな…。流石双子、言う事が同じなんて双子過ぎるじゃないか双子って凄いな


「分かった」
「…やけに物分かりが良いな?」
「そ、そんな事は無いよ?」


 やばい、どもった。僕って演技下手なのかな、下手なのかな!?自分から見えないけど、引き攣っているであろう笑顔を貼り付けたままいると、幽霊は僕を見透かしたように鼻で笑った


「まぁ良い、協力はして貰うからな」
「分かったよ」
「じゃあ帰るぞ」
「はいはい…って、え?」


 帰るぞってどこにですか。幽霊って家持ってるの?最近の幽霊って凄いわー…と尊敬していると、幽霊は僕が何を言っているのか分からない様に首を傾げて言う


「お前の家だ、案内しろ」
「…はぁ?」
「俺だって好きで此処に居る訳じゃないからな、協力するならお前の家に連れて行け」


 この幽霊タチ悪っ!こんな性格が曲がってるなんて…!流石涯と血を分けた双子なだけある、驚きを超えて感心するね。感心してる暇なんて無いけど。


「ちなみに断った場合は…」
「お前を呪う」
「ですよねー…!」


 何、え、コイツって悪霊なの?今更なんだけど悪霊なんだろうか。

 こんな事をしていても仕方ない、どちらにせよ断ったら呪われる。つまり此処は断ることは出来ないわけだ、なんてこった。僕は小さく溜息をついた


「じゃあ…案内するよ」
「さっさとしろ」





 この幽霊タチが悪過ぎてやばいです、どうしたらいいですか。――諦めるわけですね、分かってますよそのくらい

 仕方ないので僕は帰宅に着いた。隣で幽霊が並んで歩く…何このシュールな光景。