君が幸せそうで何より | ナノ



学パロ×転生
Side /K


幸せそうな笑顔で笑う彼女が視界を過ぎる。
僕は、そんな彼女の姿を見て心から"良かった"と思えていた。

彼女の名前は、アルトリア・ペンドラゴン

前世…、と言っても何百年も昔の僕と言う人間の記憶。何代前の記憶かなんて僕には見当もつかないが、彼女は前世で僕のサーヴァントのセイバーとして召喚された。召喚をしたのは紛れも無く僕と言う人間で、僕は彼女とは何度もぶつかりあって最後まで和解出来ること無く聖杯戦争は終わった。それが前世の僕の記憶。


理科室の窓からアルトリアが最近付き合い始めたばかりらしいディルムッドと手を繋いで帰っている所が見える。彼女は記憶を無くしているようで、僕と出会った時に何も気づいていない様子だった。

――それでいい。

僕は前世の僕とは違う
確かに記憶はあるが、彼と同じ思考回路をしているわけではない。アルトリアの事を嫌悪しているわけでもない。前世の僕…衛宮切嗣のアルトリアに対する感情だって理解はしているけど、僕は嫌いなわけではない


寧ろ、気になっている


記憶が残っているから、彼女を一生徒として見ることは叶わず気付けば目で追っていた。授業中の真面目な態度や、友達と居る時の楽しそうな笑顔、部活中の気迫溢れた姿に…、ディルムッドと居る時の心の底から幸せそうな顔。それら全てを見て、僕はアルトリアという人物を生徒としてではなく、一人の女として見てしまっていた。教師という立場的に見ると、立派な犯罪の部類である。


それに僕は理解している
僕が下手にアルトリアと接触して、アルトリアにまで封印されているであろう前世の記憶が復活してしまった時…きっと彼女は絶望する。聖杯戦争と言う地獄を思い出して、彼女はきっと今の様な生活が出来なくなるだろう。ディルムッドとの幸せな時も無くなってしまうであろう。



君の悲しむ姿が見たくないから、僕は幸せそうな君を遠くから見つめる選択を選んだ。それが間違っているとは、自分では思ってない。






君は今度こそ幸せになってくれ