貴方が幸せそうで何より | ナノ



学パロ×転生
Side /A


以前と変わらない瞳が宙を彷徨っている
私は、そんな彼の姿を見て"変わってないな"と苦笑した


彼の名前は、衛宮切嗣

前世…、と言っても何百年も昔の私と言うサーヴァントの記憶。彼は前世で私のマスターとして存在していた。私を召喚をしたのは紛れも無く衛宮切嗣と言う人間だった。私は彼とは何度もぶつかりあって最後まで和解出来ること無く聖杯戦争は終わった。それが前世の私の記憶。私と言うサーヴァントの記憶、私は今サーヴァントとしてではなく人間として生まれて来た。


職員室に入ると扉から切嗣と近々結婚する噂のあるアイリスフィールと切嗣が談笑しているのが視界に入る。彼は記憶を無くしているようで、私と出会った時に何も気づいていない様子だった。

――それでいい。

私は前世の私とは違う
確かに記憶はある。しかし私と同じ思考回路をしているわけではない。切嗣の事を嫌悪しているわけでもない。前世の私…アルトリア・ペンドラゴンの切嗣に対する感情だって理解はしているけど、私は嫌いなわけではない


寧ろ、気になっている


記憶が残っているから、彼を先生として見ることは叶わなかった。気付けば目で追っていた。授業中の教科書を読む姿、同僚と居る時の嫌そうにしつつも楽しそうな笑顔、部活顧問中の気合いの入った姿に…、アイリスフィールと居る時の心の底から幸せそうな苦笑。それら全てを見て、私は切嗣という人物を先生としてではなく、一人の男として見てしまっていた。この感情は立派な犯罪の部類であることも知ってる。


それに私は理解している
私が下手に切嗣と接触して、切嗣にまで封印されているであろう前世の記憶が復活してしまった時…きっと彼は絶望する。聖杯戦争と言う地獄を思い出して、彼はきっと今の様な生活が出来なくなるだろう。アイリスフィールとの幸せな時も無くなってしまうはずだ



貴方の悲しむ姿が見たくないから、私は幸せそうな貴方を遠くから見つめる選択を選ぶ。それが間違っていると、私は思ってない。





貴方は今度こそ幸せになってください