人間になる事を諦めた人間は | ナノ



殺し屋設定の切嗣


---


ぐちゃぐちゃになった肉塊が足元に散らばる。敵か味方かなんて分からないが、大勢いた敵も味方も全て消えてしまった事だけは理解している。いや、理解しているけど理解しきれない自分が少し居た

血に染まったコートから煙草を取り出して火を付ける。深く深く吸い込んで、同じように深く吐き出す。真っ暗と言って過言ではない風景の中に白い煙が宙を舞った



――ようやく、終わった。

長い戦いだったと思う。いや、実際に長い戦いだった。僕は遠くから味方の援護射撃を延々と撃ち続け、多くの敵を殺した。僕が一人殺す間に、味方は一人死んでいった。殺し殺され残ったのは僕だけだった。周りの人間だった物体は最後まで戦い続けて死んでいった。

生き残りは僕だけだ

それを僕は嬉しく思う。不謹慎なのかもしれないが死ななかったのだから。唯一生き残れたんだ。周りの人間が死んでいく中で僕だけは安全な場所から敵を狙って敵を殺した。味方は前線に出て撃って撃たれて命を落とした。そんな中で僕は一人生き残ったんだ。死んでない、肉塊になってない。人間のままだ、これが嬉しくないわけが―――、ない。



ピリリッ


懐の携帯電話が音を立てて鳴る。――そうだった、電源を先程入れたんだった、とつい先程の自分の行動すら忘れており苦い笑みが零れる。右手に既に何本目か分からない煙草を持ち、左手で携帯の受信メールを開くと、予想通りの人からメールが数件入っていた



【次の仕事が溜まっている。早く片付けて帰って来い。 綺礼】

「一服するくらいの暇は貰っても良い気がするんだけどね」


ぼろぼろと煙草の先端が灰になって落ちる。懐より煙草を取りだしたが、今のが最後の一本だったようで煙草は切れてしまっていた。よく周りを見ると、血と肉と僕が吸い捨てた煙草が幾つも転がっているのが視界に入った。よくもまあ、こんな場所で煙草をこんなに吸い散らかしたもんだと我ながらに感心してしまった。

空になった煙草の箱を握り潰し、愛用の銃等が入った鞄を背負って、僕は歩き始めた。あまり長居するのは良くない事くらいは理解しているし、早く帰らなければ同僚の綺礼に小言を言われるのは目に見えてしまっているしね。


動かなくなった屍の上を躊躇なく踏んで進んでいく。靴やズボンの裾が血でぐちゃぐちゃに濡れ、不快さを感じながらも足を止めること無く進んでいく。




止まる事は許されないから、進むしかない。





後戻りも止まることも許されない…って言うのが常識なんだよ








軽く設定でも書いてみる


衛宮切嗣 /傭兵
フリーの傭兵で援護射撃しかしない。前線に出ることは決してせずに後ろから敵を殺して行く。腕前は超一流で狙いを定めた敵は必ず仕留めるが、戦い中にも煙草を吸ってたりする。上司に煙草がバレた場合は何らかの罰が言い渡されたりする。女は好まない、馴れ合いが苦手

言峰綺礼 /傭兵
切嗣の同僚。切嗣とは違い前線に出て敵を倒す。刀や体術などに優れていて、それでいて敵の気配にも敏感なので彼が戦いに出ても傷を負う事はまずない。他人の不幸が蜜の味、安定の外道


今の所二人しか出てないのでこれだけ。殺し屋っぽい物体です、三大騎士辺りも出したいとは思っているけど続きが書けるかどうかが不明だったりする。書きたいとは思ってます、一応。