恋愛距離感の難しい幼馴染 | ナノ




自転車の荷台の部分に乗るのは実は初めてで、バランスの取り方が分からず切嗣にしがみついていた。下手をすると振り落とされてしまいそうで怖かったし、そして何より…

(ギルガメッシュにキスされた所…見られてますよね…。)

切嗣の目にどのように映ったのかは不明だけど、確実にキスされた所は見られてしまった…。それが何より一番嫌だった。私より5歳も年上の兄さんみたいな存在で、それで…

(想い人に見られるなんて…最悪だっ)

年上の兄さんみたいな人だけど、それと同時に私の好きな人でもあった。幼い頃に恋心を抱いて…かれこれ八年の片想いとなる。

そんな人に、ギルガメッシュという無駄に容姿だけ整った男にキスされた所を目撃されたのだ。なんとなく口を聞く事が出来ず、気まずい空気が流れつつも自転車は進み続けた。二人乗り故に切嗣の表情が窺えず、不安は募る一方だった。


「あの…っ」
「何でキスしてたんだ」
「え…?」


思い切って口を開いたのに、切嗣によって遮られた。切嗣の声が普段は染み渡っていくような優しい声なのに、今の切嗣の声は冷たく感じた。


「…ギルガメッシュと付き合ってたのか」
「いえ…、付き合っては…」
「じゃあ付き合ってないのにキスをしたのか」
「違います、私は…!」
「じゃあ何故!」


進み続けていた自転車が止まり、切嗣は私の方を向いた。普段から死んだ魚の様な眼をしている切嗣だけど、今の切嗣の目は普段よりも更に濁った眼をしていて、不幸のどん底に落ちてしまったかのような目をしていた。そんな切嗣の目を見ると、凄く自分が嫌になって思わず涙が零れる。


「ア、アルトリア!?」


不意に泣きだした私に慌てたような素振りを見せる切嗣。私は頭の中がぐちゃぐちゃのドロドロになってしまっていて、上手く言葉を紡げないが、それでも必死で説明をした。


「ギルガメッシュとは…本当に、付き合って無くて…。」
「…」
「キスも…不意を突かれて、ギルガメッシュが無理矢理…っ!」
「もう良い、分かった…」
「私が本当に好きなのは――っ!」

「もう良い、僕は怒ってないから泣かないで?アルトリア?」


ぽすっと頭の上に手が乗り、泣きじゃくる子供を諭すかのように頭を優しく撫でられる。本当は今、切嗣に気持ちを伝えようとした。しかしそれは切嗣本人によって遮られてしまい言う事は出来なかった。


それは、きっと―――




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